本格的な江戸前鮨を新宿で楽しもうとすると、これがなかなか難しい。もしホテル系か大衆系かくらいしか選択肢を持っていないなら、おすすめしたいのが西新宿にある『鮨 さがね』だ。カウンター6席だけのこぢんまりとした店だが、店構えを見ただけで周囲の雑踏にはない凛とした品格を感じることだろう。木の引き戸を開ければ、桜をモチーフにした目に爽やかな空間。若い大将の腕前を目でも楽しみつつ鮨をつまめば、慌ただしい街を忘れて時もゆったりと過ぎていく。
開店は2011年だが、2017年の春から店主の山口秀樹氏が前店主の意思を引き継いでリニューアルオープン。調理師学校卒業後、都内の鮨店で10年修業をした山口氏が握るのは、若手職人だからこその「感性」が生きた伝統的な江戸前鮨だ。「BGMもない中で、わさびをする音や魚を切る音なども楽しんでほしい」と語る山口氏は、若い方や海外の方にもっと江戸前寿司の伝統や魅力を知ってもらいたい、と意欲的だ。
鮨ダネは築地で仕入れ、旬を大切に正統な中にも遊び心を交えた握り・料理・酒肴が信条。おすすめはゆでたての車海老、白煮にしてわさび醤油で楽しむ穴子、脇役のかんぴょうも店主の地元・栃木の味として欠かせない。自家製の珍味には日本酒もよく合う。酢飯はお客様の来店時間に合わせ、羽釜の炊飯器で炊い米に米酢と赤酢をブレンド。酢には無農薬米づくりからはじめる通な醸造所・京都の飯尾醸造の「富士酢」を利用している。新潟・燕市の錫をはじめ、ガラスや陶磁器など料理にあわせた器の工夫も目に楽しい。 「“鮨が食べたくてこの店に来た”というお客様が集う店にしていきたい」と店主。随所に若手ならではの感性が光る鮨店だ。
■アクセス
東京メトロ丸ノ内線 西新宿駅E8出口 徒歩5分
JR山手線 新宿駅西口 徒歩9分
西武新宿線 西武新宿駅 南口 徒歩9分