京都の名所・円山公園内の閑静な一角に店を構える『未在』。グルメガイドでも三つ星を保持し続け、全国の食通が一度は訪れたいと願う、名店中の名店である。
店主の石原仁司氏は、15歳で料理の道へ進み、『大阪高麗橋吉兆本店』に入店し、吉兆の創始者である湯木貞一氏に師事。24歳の若さで『京都吉兆本店』の料理長に抜擢され、38歳で総料理長に就任するなど華やかな階段を昇り続け、31年もの間、名店の味を支え続けてきた。
そして2003年6月、満を持して独立。茶人としても著名な師匠の精神を受け継いだ石原氏が目指すのは、茶の湯の世界で大事にされてきた「一座建立(いちざこんりゅう)」の心。一服のお茶のために、さまざまなしつらえやもてなしを施し、それによりゲストとの一体感が生まれることを表す言葉だ。料理だけでなく、器や盛り付け、店内の掛け軸や生花、そして店に至るまでの公園の風景までも含めて季節を表現し、五感を刺激。茶懐石の作法にのっとり、最初に飯、汁、向付ののった折敷が出され、料理にはその日のために厳選した旬の食材が毎日300種類ほど使用されるという。
店内は数奇屋造りを現代風に仕上げており、カウンター14席、6名まで入れる個室一つで構成。最善のおもてなしを尽くすため、ゲストを迎えるのは一日一回、18時からの一斉スタートのみだ。「未在」とは、禅語で「限りがない」という意味で、石原氏が座右の銘として心に刻んできた言葉。全国から予約が殺到してもなお、向上心を持って更なる高みを目指し続ける石原氏の生き様そのものにゲストは感動し、心の共鳴を呼ぶのだろう。
※世界的グルメガイド京都・大阪 2023年度版にて三つ星を獲得
■アクセス
京都地下鉄東西線「東山」駅2番出口より、徒歩15分
阪急京都線「河原町駅」2番出口より、タクシー5分