新潟有数の旅館があり、観光地としても賑わいをみせる新発田(シバタ)市。この地で、1954年(昭和29年)に創業し、地元客に長年愛され続けてきた一つ星の『鮨 登喜和』。現在は、3代目の小林宏輔(コバヤシコウスケ)氏に引き継がれ、2017年5月に内装をリニューアル。座敷席があるような地方の鮨屋ではなく、カウンターと個室カウンターに別れた都会的なしつらえに変え、鮨やつまみを進化させることで、老舗の伝統の中に都会的な要素が加わった独自の店づくりを行なう。
小林氏は、幼少期のころから仕込みの手伝いをして、鮨に慣れ親しんだ環境で育ち、高校卒業後に上京。一度は飲食とは別の道へ進んでいたが、改めて鮨の魅力に気づき、下北沢の『すし屋 魚真』で経験を積む。2010年に『鮨 登喜和』に戻り、内装のリニューアルも経て、さらに進化を遂げている。
鮨で名物となっているのが、創業から変わない人気の「登喜和のいなり」。新潟で古くから親しまれている胡桃の飴煮が入った巻き鮨をアレンジしたもので、茹でた栗と胡桃の飴煮を酢飯と油揚げで包んだ一品。そのほかのお勧めは白身で、ノドグロは通年で提供。カニも定番で、季節ごとにワタリガニ、ズワイガニ、毛ガニとさまざま。マグロは築地の「やま幸」を使用する。
酢飯に対するこだわりは特に強く、新発田市で唯一高橋邦雄氏が生産しているこ“豊コシヒカリ”を、山間の赤谷地区で湧く湧水を使って炊き上げる。すし酢は笹川流れの塩”白いダイヤ“と村上岩船酢と赤酢の2種をブレンドし季節ごとに変わる魚に合わせ調整する。コシヒカリの変異種である豊コシヒカリは粒が大きく、且つ“硬質”でそのお米を羽釜で炊く事で、一粒一粒が立った存在感のある酢飯が産まれる。酢の効いた酢飯をひと噛みする度に米どころ新潟の底力を感じれる握りだ。
老舗の佇まいの中、リニューアルした内装は樹齢300年の檜を使ったL字型のカウンターが10席。また、店舗内に設置されたワインセラーにはブルゴーニュを中心にワインやシャンパンを常時数十種取り揃え、新潟清酒と共に様々のシーンで楽しめる。伝統と革新が共存する空間で、新潟ならではの鮨とお酒を、ぜひ一度味わってみてはいかがだろうか。
■アクセス
JR「新発田」駅より、徒歩15分