四谷三丁目駅から徒歩3分、小規模な良店が立ち並び、食通が好んで通う荒木町の一角に店を構える『多仁本(たにもと)』。懐石料理店で料理長として活躍し、茶道の心得もある店主・谷本征治氏が生み出す、繊細かつ凛とした料理が楽しめる日本料理店である。2019年度版の世界的グルメガイドブックにて、一つ星を獲得した。
谷本氏は、鮨店や小料理屋で料理人のキャリアをスタートさせ、20代のころから茶道を嗜む。その当時、とある京都の日本料理店で食事をし、供された料理の美しさを知ったことをきっかけに、日本料理の道へ。滋賀と東京にある茶懐石の料亭で8年、南青山の懐石料理店では3年間料理長を務め、2017年4月に独立し、『多仁本』をオープンした。
コースは、日本の四季の恵みをふんだんに取り込んだ懐石料理。魚は瀬戸内海産、野菜は京野菜を中心に全国から旬のものを集めるなど、食材一つひとつにこだわって仕入れを行ない、味を重ねすぎないように注意しながら素材の味を引き出すように仕上げている。
なかでも日本料理の華である椀物には特にこだわる。だしは利尻昆布と真昆布をブレンドして前日からじっくり水出ししたのち、カツオ節を合わせてひく。具材は厳選した素材を手間ひまをかけて下処理をし、だしと合わせて風味豊かに仕上げている。また、コースの最後に谷本氏自らたてる抹茶が登場するのも楽しみの一つだ。ドリンクは日本酒をお勧めしており、料理を邪魔しないように味が濃すぎず、米の旨みを感じさせながらすっきりとした味わいのものを中心に取り揃える。
シンプルですっきりとした店内には、カウンター8席のみ。毎日、谷本氏が花を生けてお香を焚き、茶室に通ずるような凛とした空間をつくる。接待からご夫婦や友人同士の食事、夜の時間帯はお一人様でも利用でき、使い勝手のよさも好評。店主の誠実な人柄が表れた正統派の懐石料理を、カウンター席で気軽に味わっていただきたい。
※世界的グルメガイド東京 2023年度版にて一つ星を獲得
■アクセス
東京メトロ「四谷三丁目」駅より、徒歩3分
東京メトロ「四ツ谷」駅より、徒歩8分