熊本の中心街から、1ブロック離れた静かな住宅街に、一見するとレストランとは思えない白壁の一軒家レストランがある。熊本を代表する日本料理店『新屋敷 幸福論(しんやしき こうふくろん)』である。カウンターとの段差のない、フルオープンのアイランドキッチンから、「いいも悪いも、すべて見てください」という店主の心意気が伝わってくる。
店主・都原 慎司(とはら しんじ)氏は、熊本県出身。大阪や東京で修業ののち、フランスへ渡った。パリで修業を重ね、帰国後は横浜のフレンチでも経験を積み、2011年7月には、日本料理の素晴らしさを地元で伝えたいとの思いで、独立開業を果たした。そして2018年7月、世界的グルメガイド初の熊本版にて、見事二つ星を獲得。
劇場のような圧倒的ライブ感とともにいただけるのは、繊細な手仕事とそぎ落とした美学が伝わる現代的な日本料理。「あえて説明をしなくてもシンプルにおいしくて、『何かちょっと違うな』と感じさせるくらいの料理がいい」と語る都原氏。その日仕入れた魚を見て、自然の流れにまかせて料理を考え、それぞれの素材を最高のコンディションで味わえるように完成させていく。そんな料理の味を邪魔しないよう、日本酒はキレがよく後味が残らないものを中心にセレクト。銘柄にこだわらず様々な日本酒を定期的に入れ替えており、料理と日本酒の一期一会を楽しめるのもまたいい。
客席は、カウンター6席と、ゆったりとした6名の個室が2部屋。「大事にしているのは、お客様が会話を楽しみながら過ごす時間。品数も多いので、3~4時間かけてゆっくりと愉しんでいただきたい」と都原氏。大切な人と、至福の料理を囲んで過ごす数時間は、最高の喜びとなるに違いない。
■アクセス
九品寺交差点駅から1,002m