自然派イタリアンとして一世を風靡した「リストランテ カノビアーノ本店」や、代官山の洋館「リストランテASO」での研鑽、そして京都のリストランテやアロマフレスカグループでの料理長という輝かしい経歴。しかしそれだけでは、『farineria HaRe(ファリネリア ハレ)』のシェフ・髙山直一氏の料理に対する姿勢の本質を知るにはいたらない。「野菜を勉強したい」という一心で、京都の歴史ある農家に住み込み、約2年間、野菜ともっとも近い場所で毎日を過ごした。そこで髙山氏は、野菜のいちばん美味しい食べ方に開眼し、そのときの知識と経験が、いまの料理を支えている。
日本料理をベースに、イタリア料理のエッセンスを採り入れた調理法による、二十四節気をモチーフにした月替わりのコース。組み立てにおいても、髙山シェフにとっては、「まず食材ありき」で、イタリアンや和食などのジャンルの垣根は必要ない。その月の旬となる野菜をメインに、季節の色彩を盛り込んだ八寸など、酒粕・シソ・葉ワサビなど和の素材を使ったソースも活かしながら構成される。たとえば6月なら、氷の節句とも呼ばれる水無月をテーマに、氷によって持ち味が引き立つ野菜を主役に据える。お椀も冷たいものに仕上げてしまう。季節感へのその鋭敏な感覚は、茶懐石の精神に通じるともいえる。
そして、髙山シェフのもうひとつのこだわりが、醸造酒の珠玉の品揃え。ワインはイタリア・フランス産を中心に150種類、日本酒は200種類の中から「飛露喜」「鍋島」「写楽」「新政」など常時50種類をオンリスト。クラフトビールも充実し、料理とお好みに合わせて、絶妙なマリアージュが楽しめる。
アンティークの家具や花瓶、そして大きな暖炉がしつらえられた店内。そこに、春には桜、夏にはツツジ、秋はサンゴやミズキ、クリスマスにはモミの木の彩り。四季折々の表情が織り込まれた豊潤な落ち着きの中で、二十四節気を鮮やかに映し出すひと皿に向き合えば、季節と共鳴する澄んだ感覚まで呼び覚まされるに違いない。ダークブラウンを基調とするメインダイニングでは友人同士、ロフト席では会食やデート利用など、さまざまな食の時間を有意義に過ごしていただきたい。
■アクセス
JR山手線「恵比寿」駅 西口より徒歩5分