二つ星の鮨店『すし 姫沙羅(ひめしゃら)』が、北海道・すすきのから円山公園エリアに移転したのは2017年12月のこと。店主の田中彰氏は、和食と鮨の修業を積むなかで職人としての腕を高く評価され、多数の鮨店の立ち上げを経験したのち、2003年に独立。ハイレベルと言われる北海道の鮨店で二つ星という名誉が表す通り、道外や海外からのゲストも多い実力店である。
「鮨」という字は、“魚”を“旨”くすると書くが、『すし 姫沙羅』では魚と米を旨くする「魚米旨(すし)」と表現する。「鮨は口内調理である」と田中氏。口の中で酢飯と魚介がマリアージュして完成するのが鮨であり、鼻に抜ける香りを大事にしながら、その一体感を味わう時に最大の美味しさを感じられるように鮨を握る。酢飯に使うのは、2種の赤酢。コース構成は、最初に鮨、それから酒肴の盛り合わせに移り、最後は握りで〆る、という独自のスタイルでゲストを魅了する。お酒がまだ進んでいない序盤の、味覚がクリアな段階で鮨を味わい、中盤ではマリアージュを考え抜いた酒肴とともにお酒を楽しみ、最後にもう一度、鮨で感動を呼び起こされるという流れが、ベテランの域に達した田中氏だからこそ行き着いた答えである。スペシャリテのひとつ「えびの全部のせ」は、酢飯、ボタンエビ、エビ味噌、エビの卵がミルフィーユ状に重ね合わされた見目麗しい贅沢な逸品。握りたてをカウンター越しに手渡し、バランスを崩さぬよう、ゲストはそのまま頬張る。濃厚なボタンエビのうま味を余すことなく味わえる至極の鮨である。
内装は、黒を基調に無駄をそぎ落としたシンプルな造り。非日常感溢れる空間で一層存在感を放つのが、総檜のカウンターと、日本に二人しかいない木工職人の手による特注の氷室。無駄をそぎ落としたシンプルな空間だからこそ、店主の隙のない動きが際立ち、ゲストも目の前の美味に集中できる。北海道産の食材と、江戸前の仕事、熟成。進化し続ける北海道の鮨シーンの勢いを、『すし 姫沙羅』で体感できることだろう。
■アクセス
札幌市営地下鉄東西線「西18丁目駅」より徒歩10分
市電「西線9条旭山公園通駅」より徒歩8分
すすきの交差点よりタクシー10分
JR札幌駅よりタクシー13分
【ご注意】
2017年に「北海道札幌市中央区南六条西4丁目1-1 プラザ6.4ビル4F」から移転しております。お間違いなきよう、ご来店ください。