北九州・小倉駅から徒歩8分、モノレール・平和通駅すぐ近くに位置するカウンター8席の鮨店『寿司つばさ』。一歩店内に入ると、商店街の賑わいとは別世界の、清々しく落ち着いた和の空気感に包まれる。吉野杉を贅沢に使った数寄屋造りに、カウンターは銀杏の一枚板。店主・黄丹翼(おうたん つばさ)氏が、京都で修業した数寄屋大工と二人で作り上げたという内装は、細部の意匠にまで凝っていながら、全体の印象はあくまで控えめ。供される一品料理や鮨の華やかさを引き立てる、名脇役の趣である。
2012年10月に開店した『寿司つばさ』が現在の場所に移転したのは、2016年7月。「以前は街外れだったので、お客様がもっと来店しやすいように」と、黄丹氏。8年間修業し、現在も交流が続く師匠の『もり田』に近いことも、理由のひとつだったのかもしれない。『もり田』や、『もり田』の大将が修業した『天寿し』といえば、地元前にこだわった小倉鮨の代表格。『寿司つばさ』もその系譜に連なり、4~5品の小鉢や一品料理から握りへと続くスタイルである。中でも、飾り包丁を入れたイカは、小倉鮨の代名詞ともいえる一品。さらに、山口・蓋井島(ふたおいじま)の深海から揚がる魚(イサキなど)をメインに、おまかせコースは構成されている。
お酒は、キレのある淡麗辛口の日本酒が中心。新潟「〆張鶴 純」「鶴の友」、福島「大七」などを定番に、季節の日本酒や地酒を盛り込みながら、常時30種類ほどが用意されている。「ワイン、焼酎、ハイボール、梅酒など、とにかく鮨に合うお酒」というのが、黄丹氏のポリシー。「純粋に鮨を食べに来てくれる方に、北九州の鮨を知っていただきたい」という想いは、地元客はもちろん、北九州以外や海外からの鮨好きにも通じている。一品一品に仕掛けがあり、ひと口ごとに新鮮な発見や歓びのある『寿司つばさ』の鮨。遠方からでもはるばる訪れる価値があるだろう。
■アクセス
JR日豊本線(門司港〜佐伯)「小倉駅」より徒歩8分
北九州モノレール「平和通駅」より徒歩3分