北陸鉄道浅野川線「北鉄金沢」駅から車で約10分、浅野川の畔に2018年5月にオープンした、二つ星日本料理店『片折(かたおり)』。浅野川の向こう岸に広がる「ひがし茶屋街」の江戸情緒にも浸れる贅沢なロケーションで、四季の移ろいを感じながら、地元食材の味を活かした日本料理が堪能できる。
店主の片折卓矢(かたおり たくや)氏は、二番手を務めていた金沢『つる幸』から金沢の料亭の料理長を経て独立。「北陸の食材を活かし、削ぎ落として突きつめるシンプルな料理」がモットーで、食材の目利きと仕入れには余念がない。
自然のまま採れたてのものを手に入れるために片折店主が毎日買い出しに出かける。魚は毎朝、七尾まで出かけて朝獲れのものを吟味し、活けのまま店に持ち帰ってから絞めて捌く。七尾からの帰りには田鶴浜の「藤瀬の霊水」を汲みに行き、基礎となるだしや料理に使用。野菜は直接農家に買い付けに行き、生産者の想いを聞いたり一緒に収穫したりしながら、無垢で自然のもの、旬の最上級の食材を仕入れている。また、秋には9月後半から10月にかけて、往復6時間かけて珠洲(すず)へ出向き、松茸を採りに行く。朝採れの松茸を味わえるのは、金沢唯一の特権、『片折』だけである。冬のカニや日本一の朝獲れトラフグも、片折氏が漁港で直接仕入れてくる最上級のものが揃う。
北陸の素晴らしい最上級の食材をひきたてる「だし」には、鰹節は鹿児島枕崎の特注品を。漁のとき、網に触れていないもっともストレスの少ないカツオだけを使った鰹節と、利尻・香深浜の昆布、水は藤の瀬の湧き水を使用してだしをひく。醤油は、100%国産大豆を使っている醤油。金沢一の食材が集結し、「ここだけでしか味わえない」唯一無二の料理を作り上げる。日本酒は地酒を中心に、常時5種類をセレクト。フランスワイン、シャンパーニュに加え、能登ワインも用意されている。
片折氏のこだわりは、地元の数寄屋大工による内装や器にも。8席のカウンターは石川県の県木「あて」の一枚板、床は金沢城の石垣にも使われている戸室石。床の間に飾る山野草は、能登に毎朝仕入れに行った帰りに、山に入って摘んできたものを活ける。さらに、夫婦で10年以上も集め続けたという器は、魯山人のほか、九谷焼の須田菁華氏・矢口永寿氏の作品など、石川県ゆかりの作家の古美術品が揃う。アンティーク家具をリペアしたこだわりの椅子など、食材やそのものが紡ぐストーリーとともに、片折氏の滋味深い料理の数々を味わい尽くしていただきたい。
■アクセス
北陸新幹線・JR北陸本線(米原〜富山)「金沢駅」よりタクシーで10分