南青山の根津美術館近くに店を構え、6年間、数々の食通を唸らせてきた『御料理 宮坂』が、7年目の2021年11月に移転し、新たに屋号を「宮坂」としてオープンした。店主・宮坂 展央(みやさか のぶひさ)氏は、東京都内の和食店で11年、京都の名店にて10年にわたり研鑽を積んで独立した実力の持ち主。自身の店を構えたあとも、さらなる高みを目差し、初心にかえって新たなスタートを切っている。
宮坂氏が大切にしているのは、旬の食材を使い、奇をてらわず、日本料理本来の調理法で、季節の味や風味を引き出すこと。食材は全国の生産者や豊洲から、旬の最上のものを仕入れる。そして、特に想いを込めているのが、日本の食文化の中心である「白米」。コース料理の最後に必ず振る舞われる「白米」は、厳選した滋賀の米を毎日玄米から精米し、土鍋でじっくりと炊き上げたもの。水分を多く含み、風味や甘みが際立つ「煮えばな」と呼ばれる炊き上がった直後の状態から、白米になっていく過程のさまざまな米の表情を、白米のフルコースを堪能するかのように味わう。
料理に合わせる日本酒も、宮坂氏が一本一本丁寧に選んだもの。主張し過ぎず、料理に優しく寄り添うタイプの銘柄を取り揃えている。
店内はカウンター6席、4-6人まで利用できる個室のみ。骨董と現代の陶芸家の作品で構成された器が、宮坂氏の料理をぐんと引き立てる。『宮坂』を訪れるときこそ、日常の邪念を一切忘れて、ただただ料理と器としつらえを楽しんでいただきたい。
■アクセス
東京メトロ千代田線・半蔵門線・銀座線「表参道駅」B1出口より徒歩5分