JR博多駅から呉服町方面へ歩いて約15分。冷泉通り沿いに鮨店『すし、太郎。』はある。福岡一の繁華街・中洲と距離をとるのは、「県外からのお客様が多く、混み合うエリアをタクシーで通らなくてもいい場所に」という、大将・藤井太郎氏の想いから。
「魚をおいしいと思えなかった」と言う異色の鮨職人・太郎氏の修業は2000年、スペインから始まった。バルセロナにあるホテルの日本料理店『YASHIMA』の鮨カウンターで3年間修業し、「師匠の握る鮨を食べて、初めて魚が美味しいと感じた。それが人生の岐路」と語る藤井氏。思うように食材が手に入らない環境にあっても常に研究し、工夫を重ねる師匠の姿に感銘を受け、鮨職人として歩むことを決意した。帰国後は福岡市内の料理店で経験を積み、2013年に自身の名を冠した『すし、太郎。』をオープン。開業からわずか10カ月で世界的グルメガイドの一つ星を獲得。その後もぐんぐんと注目を集め、進化が止まらないと常連客が賛美するほど、ゲストの胃袋をつかんで離さない。
使用する食材は、師匠の意思を継ぎ、先入観なく柔軟に全国の産地から仕入れ、うま味を引きだす創意工夫を重ねていく。酢は、赤酢がベースで米酢などの5種類をブレンド。魚の脂の乗り方や熟成具合で、2種類の酢飯を使い分ける。日本酒は、春夏限定で新潟「参乃越州(さんのえっしゅう)」純米吟醸、秋冬は御燗にもあう「群馬泉」純米酒を。通年では広島「宝剣(ほうけん)」、宮城「墨廼江(すみのえ)」、京都「澤屋まつもと」をはじめ常時20種類以上用意。また、チェイサーの水にもこだわり、福岡は立花山の地下1,000mから沸き出る天然温泉水を提供する。
店内は、照明を少し落とした、落ち着いた雰囲気。木のぬくもりを感じるモダンな造りは、伝統の祭事・博多祇園山笠の山笠台を作る山大工の手によるもの。ひときわ目を引く8席のカウンターは、イチョウの一枚板。こだわりの鮨を、こだわりの空間で、肩肘張らず「リラックスして楽しんでほしい」と太郎氏。ビジネス会食のみならず、家族やカップルでの一席や、英語対応できるスタッフも揃っているので、海外ゲストも安心して招待できる。
■アクセス
福岡市営地下鉄空港線 祇園 1番出口 徒歩5分