札幌中心部から少し離れた円山公園駅近くの大通り沿い。からし色の壁が目を引く『日本料理とらや』は、店主の丸山 聡士(まるやま さとし)氏が夫婦で営む一つ星の日本料理店である。
丸山氏は、北海道・北見市出身。天ぷら店を営む両親の影響から、自然と料理人の道へ。うなぎと日本料理『東京竹葉亭 札幌店』で料理長を5年務めたのち、1996年3月に独立し、『日本料理とらや』を開業した。「献立は、季節が決めてくれるもの。旬の食材を選んでいると、料理人として喜びを感じます」と語る丸山氏。自家農園の野菜をはじめ、使用するのは主に北海道の食材。厳選した魚介に加え、四季折々の野菜がふんだんに盛り込まれたコース構成が特徴だ。定番の人気料理は、旬の野菜で作る「15種類の野菜のおひたし」。滋味深い野菜の味わいは余韻が長く、食べた後にまで深く記憶に刻まれる。また、北海道では数少ないうなぎ料理の名店としても知られ、とりわけ夏は、鹿児島のうなぎを使った「うなぎ会席」を目当てに訪れるゲストも少なくない。料理に合わせる日本酒は、野菜と相性がよく、スーッとのどを通っていくような軽やかな口当たりのものを中心に、常時6~7種類揃えている。
木のぬくもり溢れる店内は、テーブルや椅子、絵画や書、調度品に至るまで、すべてが職人の手によるもの。器もオリジナルの作家もので、『日本料理とらや』のコンセプトに合うものが少しずつ集まり、思いのこもった空間をともに作り上げている。1階は、カウンター6席と、個室が1部屋。2階は、テーブル個室1部屋と、お座敷が2部屋。観光客や海外からのゲストはもちろん、お食い初めや誕生日、こどもの行事など家族の大切な日をここで過ごすファミリーも多く、地域で長年愛されている由縁の一つである。「疲れているときや、野菜たっぷりの食事でほっと癒されたいときに来ていただけると嬉しいです。うちの料理は、量を食べても翌朝の体が軽いですよ」と丸山氏。北の大地の恵みを、野菜というアプローチから表現する『日本料理とらや』は、日本料理の本質と、心からの安らぎを感じさせてくれる。
■アクセス
札幌市営地下鉄東西線 円山公園駅一番出口 徒歩3分
JR札幌駅からタクシー13分