若者が多く賑やかなイメージの渋谷の中でも、大人が集まる神泉エリア。隠れた美食店も多い神泉に、上品な店構えの『鮨 あい澤(すし あいざわ)』はある。オープンは2011年4月。店主の相澤 博久(あいざわ ひろひさ)氏は、学芸大学『すし屋の芳勘(よしかん)』で10年間経験を積んだのち、六本木の一つ星『鮨なかむら』で4年、さらに腕を磨いた。34歳という、当時の鮨業界の中ではかなり若い年齢で独立して以来、真摯に鮨道を追求し、幅広い客層に愛されている。
魚介の仕入れは、築地(現:豊洲)から。マグロの専門仲卸として名高い『やま幸』から仕入れるマグロをはじめ、吟味した食材を使い、丁寧に仕事を施す。自家製のあん肝をはじめ、つまみにも旬の素材を使い、ひと手間かけた品を揃えている。おまかせの内容は握り中心で、酢飯と魚介との相性が考え抜かれた鮨を味わうことができる。酢飯は硬めに仕上げ、口の中で鮨ダネと一体となってはらはらとほどけさせる計算された技術も秀逸。魚を切る、鮨を握る、といった相澤氏の所作の美しさにも、丁寧な仕事ぶりを感じられる。料理に合わせる日本酒は、常時10種類ほどを用意。季節や好みにあわせてセレクト可能。
白木をふんだんに用いた清潔感のある店内には、カウンター9席と、4名の小上がりが1卓。渋谷駅からも徒歩10分ほどという場所柄、若者から年配の方まで、さまざまなゲストが訪れるという。「日々の喧騒から離れて、ゆったりと鮨を食べにきていただきたい」と相澤氏。多くは語らない相澤氏の秘めたる情熱のこもった品々を、ぜひカウンター越しに感じていただきたい。