古都・金沢の市街地のなかでも人気のスポット、近江町市場。活気あふれる市場のすぐそばに、二つ星のスペイン料理店『respiracion(レスピラシオン)』はある。「ひがし茶屋街」からも徒歩5分の恵まれた立地で、築140年の貴重な金沢町家を改装した、情緒ある街に溶け込む一軒家レストランだ。入口には、店名を記した小さな金のプレートがかかっているだけ。扉を開ける前から、どんな体験ができるのだろうと、期待せずにはいられない。
シェフは3人体制。メインの梅 達郎(うめ たつろう)氏、八木 恵介(やぎ けいすけ)氏、北川 悠介(きたがわ ゆうすけ)氏。3人は石川県生まれの幼馴染み同士で、梅氏と八木氏は、スペイン・バルセロナでの修業経験がある。そこにソムリエの金村 俊宏(かなむら・としひろ)氏が加わり、4名で北陸モダンスパニッシュの世界を展開している。料理はモダンで、一皿ごとに美しさと楽しさがある。たとえば、コースの初めに必ず出される「甘エビの再構築」。上生菓子のような鮮やかな色の小さな塊は、甘海老の頭の味噌でシートを作り、身をつつみ、殻をタルトにして、海老のすべてを用いて海老を表現。その意外性に、三人の料理の世界に思わず引き込まれてしまう。また、必ずコースに組み込まれるパエリアは、スペイン料理店としての技術力の確かさを感じさせる。ワインはソムリエの金村氏が料理に合わせてスペイン、フランス産などをチョイス。セーズファームや能登ワインなど、地元の日本ワインも揃えている。
趣のある町家の中に一歩入れば、店内は洗練された美術館のようなたたずまい。テーブル20席で、家族・友人と特別な日を楽しむのにぴったりである。『respiracion(レスピラシオン)』という店名は、スペイン語で呼吸を意味する。生産者から生命の息吹をつなぐアンカーとして、呼吸がぴったりと合った三人のシェフが生み出す、唯一無二の食空間なのである。その楽しさに惚れ込み、石川県外の遠方からもはるばる足を伸ばすゲストがますます増えるばかりである。
■アクセス
北陸新幹線・北陸本線金沢駅東口下車 徒歩20分,タクシー10分