札幌市中心部の繁華街、すすきのから少し離れた中島公園近くに店を構えるのがレストラン『霜止出苗(しもやみてなえいずる)』。「札幌の鬼才」と呼ばれる五十嵐光(いがらしひかる)シェフが、こだわり抜いた料理を提供し、食通たちをうならせる。
五十嵐シェフは高校卒業後、ホテルでの勤務を経て24歳で渡仏し、星付きレストランで3年勤務。帰国後は、札幌のレストラン数件で腕をみがき独立。2013年に自身のレストラン『五十嵐』をオープン。人気を集め、その5年後には一旦閉店。フランス料理と銘打って店を始めたものの、突き詰めていくと無駄なものを削ぎ落とし、ジャンルの壁を取り払った料理を提供したいという思いが強まり、心機一転。2019年3月、次なるステージに向かい『霜止出苗』を開店した。
店名の『霜止出苗』とは、七十二候の季節を表す言葉の一つ。霜が終わって、稲の苗が育つ四月の末頃。北海道の自然の緑が麗しい時期を表す。「ナチュラルなイメージが、料理に化学調味料を使わない」という五十嵐シェフの料理と合うという。和風な店名に変えたのにも訳がある。「ジャンルはフランス料理にカテゴライズされてしまうが、今はその範疇にはとどまっていない」という。フランス料理のテイストを入れ込みながらも、おいしいものを提供するために、オリジナリティを持つ。「北海道という地で胸を張れる食材は魚」との思いから、北海道産の魚を主体で提供する。スペシャリテの 「コハダのテリーヌ」を目当てに通う常連客も少なくはない。もちろん肉も吟味されたものを提供。 15~20皿で展開されるコース料理で、「日本食でない日本の料理を、日本の店で楽しんでほしい」と語る。ドリンクは焼酎、日本酒もそろえるが、フランスのヴァン ナチュールのワインを味わっていただきたい。常に連絡を取り合い、直接顔をあわせて情報交換している生産者から選りすぐったワインを、お料理とともに楽しむことができるのはここならではの醍醐味ともいえる。
店全体は和のテイスト。扉をガラガラと開け、坪庭を抜けたところで靴を脱いであがると、畳の心地よい香りが迎えてくれる。店内は掘りごたつのカウンター6席のみ。家族や知人、友人と、また仕事仲間、グルメ仲間との会食などで、札幌の鬼才・五十嵐シェフの繰り出す料理をゆっくり楽しんでほしい。
■アクセス
札幌市営地下鉄南北線 中島公園 徒歩2分