代官山と恵比寿の間に拠点を移したのは、2019年3月。一つ星のフレンチレストラン『abysse(アビス)』が新たに掲げるテーマは「碧い森」。深海を意味する『abysse』は、海と森に敬意を表す前衛的な料理で、食通たちを魅了する。
目黒 浩太郎(めぐろ こうたろう)シェフは、フランスの港町マルセイユで魚介料理を得意とする三つ星フレンチ『Le Petit Nice – Passedat(ル プティ ニース パセダ)』で1年間修業。帰国後、品川の三つ星『カンテサンス』で研鑽を積み、2015年に南青山に『Abysse』をオープンした。そして代官山に移転後、店名やロゴ、テーマも一新し、『abysse』として次なるステージに立った。
目黒シェフが目指すのは、海と森からの恵みを尊重した「ジャンルにとらわれない唯一無二の料理」。「四季折々に顔ぶれも変わる日本の魚介類の素晴らしさを発信したい」と目黒シェフ。ソースのベースには丁寧に抽出した多種の出汁を煮詰め凝縮させたものを使用し、魚は水分を抜き寝かせるなど、素材の持ち味を高めながらうま味を引き出していく。また、味の強弱、浅深をつけ心地いいコースの流れにも気を使う。さらにこだわるのが、素材のもつ色をいかし、皿の上で表現すること。たとえば鯛なら、身の「白」と表面や鱗の「赤」が映えるソースでプレゼンテーションし、素材を魅せる。
「魚介に特化するからには、最上級の魚介を仕入れるべき」。魚の神経締めで名高い愛媛の漁師・藤本純一氏や、相模湾天然地魚を扱う小田原の「並木屋」をはじめ、札幌や小倉、山口の市場など、信頼できる取引先から見事な魚介を直送してもらう。そして、魚が生きる〝海〟へとつながる〝森〟の恵みと組み合わせ、最高のうま味を構築するべく、厳選された野菜のみを使用。目黒シェフの綺麗な料理に寄り添うよう用意されたワインは、フランス・ブルゴーニュをはじめ、世界各国のトレンドも取り入れ、およそ250種類をソムリエがセレクト。ワインペアリングもお薦めである。
店内の空間イメージも「碧い森」。北欧の湖に沈んだ木を壁に飾るなど、『abysse』のコンセプトが演出されている。厨房はオープンキッチンにすることで、調理姿を見せ、ゲストの様子もうかがえる造りとなり、一体感をもたせながら、料理人とゲストとの程よい距離感が保たれている。個室はガラス張りながら、スモークシートによってプライバシーが守られたデザインに。また、ダイニングのテーブル席がすべて円卓なのは、「ゲストそれぞれの世界観を守り、相手との会話や料理に集中してほしい」という目黒シェフの強い想いから。「一日一日、料理とゲストに真摯に向き合い、いいレストランにしていきたい」と、穏やかなる熱意とともに語る目黒シェフ。食通の仲間や家族、友人などと一緒に、新生『abysse』の魅力を感じていただきたい。
■アクセス
東急東横線 代官山 東口 徒歩4分