JR福井駅から、北西に4キロ。住宅街の幹線道路沿いにたたずむ一軒家『鮨 十兵衛』は、県外からも多くのゲストが訪れる福井屈指の二つ星の名店だ。
創業40年以上の『鮨 十兵衛』を盛り立てるのが、二代目店主の塚田 哲也(つかだ てつや)氏。塚田氏は、札幌『すし善』にて6年間修業ののち、福井に戻り、父の店へ。2013年に二代目に就任したタイミングで店を全面改装するとともに、鮨の内容も従来のものから大きく方向転換した。「お客様に笑顔になっていただくこと」をモットーに、福井の魚介と確かな技術を基盤としながら、独自のスタイルを追求している。
魚介は、自ら漁港を訪れ、福井をはじめ北陸の魚を目利きして仕入れるほか、東京(豊洲)や北海道などからも旬の魚介を厳選。時期ごとに最上のものを仕入れるマグロもこだわりの品だ。握り方も独自のやり方を研究し、珍しい「立て返し(仏壇返し)」で握る。赤酢と米酢をブレンドし、やや温かい状態で握るすし飯が、選び抜いた魚介の旨さをしっかりと下支えする。お酒は、魚を引き立てるすっきり辛口系のものを中心に、日本酒、ワイン、シャンパーニュなどを揃えており、なかでも品揃えが厚いのは日本酒。常時20種類のうち7割を地元の銘柄が占めており、残りの3割は県外の銘柄を中心に、月替わりで用意。奈良ヒノキの一枚板のカウンターが眩しい店内は、カウンター8席のほか、テーブル個室も用意。シンプルな内装に、さりげなく四季のもてなしが演出され、心落ちつく空間となっている。若く勤勉な店主の、丁寧な仕事ぶりと静かな情熱に心打たれる名店である。
■アクセス
JR北陸本線(米原〜富山) 福井 JR越美北線(九頭竜線) 福井 日華化学前駅 徒歩5分