京都・祇園四条駅から徒歩10分。京町家が軒を連ねる閑静な路地裏に店を構えるのが日本料理『日月房 旦(にちげつぼう たん)』。店主の村松 昭治(むらまつ しょうじ) 氏と、女将の萌(もえ)氏がやさしく迎えてくれる。店名の『日月房 旦』とは、日月=日進月歩、房=みのる、旦=初心に帰るという意味が込められている。そして、「お客様には、自分の好きな人のために作る気持ちで料理し、おいしい料理とお酒で、楽しい時間を過ごしていただきたい」と願う。
村松氏は、無農薬野菜を栽培し、川や海で釣りをする親の元で育ち、小学生の頃には飼っていた軍鶏を自ら捌いていた。近所から牛や豚の肉、ホルモンも届く環境で、早くから新鮮な食材と向き合っており、料理の道へ進むことは自然の成り行きだったという。高校卒業後、東京の日本料理店で10年ほど修業。それから京都に移り住み約7年、花街の先斗町にある川床料理店で腕を磨く。2015年に独立し、『汐鯛めし だい黒』を開店。2019年9月、店名を変更しリニューアルオープン。さらなる飛躍を目指す。
食材は、ウニやマグロは豊洲市場から、タイ、ハモ、グジ、天然のエビなどは京都中央市場から、と食材によって市場を変え、修行時代から付き合いのある仲卸業者が厳選したものに全幅の信頼を置き、仕入れている。だしは、北海道産の天然の真昆布、まぐろ節、かつお節を使用。一番だしは、入手困難で希少な天然の真昆布を低温でじっくりうま味を抽出し、滋味深い味わいを出す。特徴的なのは、ジャンルに捉われず大きな〝料理〟という枠でとらえること。たとえば中華の要素を取り入れ、甲殻類に自家製XO醤を合わせた一品や、お造りには塩やしょう油だけでなく、フランス料理のようにソースで味わえるようになど、驚きと感動を呼ぶ新メニューへのアイデアがあふれ出す。
村松氏の料理をさらに引き立たせる日本酒は、女将が絶妙にセレクトするペアリング。お互い京都の川床料理店で働いていた時代に知り合い、パートナーとなっただけに、大将とは阿吽の呼吸、料理に合う日本酒を絶妙なタイミングで提供する。地元・静岡のものから、富山「勝駒」、山形「十四代」などプレミアムなもの、長野の小布施ワイナリーが作る希少な日本酒まで、常時16種類ほど揃える。
店構えは町家。店内の内装は、組子の素材にこだわった建具に、樹齢300年のイチョウの一枚板カウンターが目を引く。カウンター7席と、個室(2-6席)を用意。個室はお子様連れも可能なので、家族の記念日など特別な日の宴で、また友人・仕事仲間との会食、海外からのゲストのおもてなしに、大将・女将とコミュニケーションをとりながら、『日月房 旦』の料理、空間を味わっていただきたい。