2023年夏。靭(うつぼ)公園近くにあった一つ星の日本料理店『京町料理みつや』は、古民家が昔の面影を残す城東区蒲生の町へ移転、『御料理 松むら』として新たなスタートを切った。
店主松村 知典(まつむら とものり)氏が料理の世界に入ったのは、神戸のステーキハウスで働いたのがきっかけ。それから日本料理の道へ進み、京都伏見の料亭『魚三楼(うおさぶろう)』で10年経った頃、自身の後学と視野を広げるためにフランスへと旅立った。現地では日本料理店ではなく、パリのビストロや、ガストロノミーレストランなど4店で働き、フランス料理だけを学ぶことで新たな風を自からに吹き込んだ。帰国後2014年に『京町料理みつや』をオープン、そして今回古民家を再生し、料理も古き良きを残しながら、新しい料理をと、この地へ移転した。
松村氏は「素材より、素材らしく」をコンセプトと考え、食材は全国の最高のものを調達するのはいわずもがな、こだわりは調味料。昔ながらの本物の丸大豆を使用した醤油、3年の歳月を経たみりん、自然発酵のお酢など、“本物”だと思えるものを厳選し、使用している。提供するコースで、松村氏が最も力を入れている料理の一つが椀の「しんじょう」である。箸をいれた瞬間にふわっとほどけて割れるしんじょうの軽やかさはどこの店にも負けない。そして食べた瞬間、素材の味わいが先にくるよう吸物には一切調味をせず、素材の風味を味わってもらうという一品だ。また、「野菜のしんじょう」の中でも白ネギは、油で炒めて魚のアラで炊き、ミキサーにかけてすり流しにするという、パリで会得したフランス料理の手法を取り入れている。
料理をひきたたせていく器は、京都亀岡の陶芸家・吉井史郎氏の作品を用い、視覚をも愉しませてくれる。
また、お酒は「日本酒あってこその日本料理」と考え、新政酒造、黒龍酒造などのお酒を用意。料理、お酒を一体として味わうことができるものを常時用意している。
一戸建ての古民家を再生した店内は、柱を残してむき出しの構造。奈良檜150年白木のL字8席の、疲れない上質な椅子を用いたカウンター、テーブルを配する。カウンターではライブ感を、テーブルでは家族や友人、仕事仲間やデート、そして海外ゲストのおもてなしなどあらゆるシーンでお愉しみいただくことができる「お料理松むら」に足を運んでみてはいかがだろうか。
■アクセス
大阪メトロ 長堀鶴見緑地線・今里筋線 蒲生四丁目駅 4番出口より徒歩3分