赤坂見附駅から徒歩5分。オフィスビルが立ち並ぶ元赤坂に、ひっそりと店を構える一つ星の『懐石 辻留』。言わずと知れた老舗の懐石料理店だ。
初代の辻 留次郎氏が、京都で裏千家13世家元から茶懐石を学び、お茶事の懐石料理を料理人が出向いて作るという出張料理店をスタート。2代目の辻 嘉一氏は茶懐石の門戸を開こうと、その流れをくむ料亭を東京に開店。現在の主人、3代目辻 義一氏は、芸術家でもあり美食家・料理家としても知られる北大路魯山人氏のもとで修業。その教えを料理長の藤本 竜美氏が受け継ぎ、腕を振るう。
献立は茶懐石の流れに沿う。「向付」から始まり、「椀盛」「口取(八寸)」「煮合わせ」「焼物」「進肴(強肴)」「留椀」「御飯」。そして「季節の果物」「御菓子」「御薄茶」と続く。古くからのご贔屓どころから届く旬の食材の数々。その本来のうま味を十分に引き出し、味わうことのできる仕立てで一皿一皿に供される。
季節の移ろいを感じる献立の中で、往年の文化人由来の品書きも末長く愛されている。ハモの椀は、常連客だった小説家の谷崎潤一郎氏が、「ボタンのようなきれいなハモ」と言われたことから「ぼたん鱧」と命名。また、3代目が北大路魯山人氏から教わった“もったいない心”から生まれた、皮までおいしくいただくことのできる「鱧皮丼」。この椀と丼と両方楽しむために、ハモの季節を心待ちにされるお客様も多い。
日本酒は、兵庫「菊正宗」の樽酒を熱燗で。冷酒は、3代目が陶芸家の小林 東五氏と共に全国をめぐり、探し当てた好みの日本酒、新潟「鄙願(ひがん)打水」大吟醸を勧める。
店内には、4つの個室が用意され、掘りごたつ形式、テーブル席、そして広間がある。炉が切れる8畳間もあるので茶室としての利用も可能だ。
お軸や額、北大路魯山人氏による器などと、洗練された懐石料理を楽しむことのできる『懐石 辻留』を、プライベートやビジネスなど、さまざまシーンで利用され、日本の風情を感じていただきたい。
■アクセス
銀座線、丸ノ内線赤坂見附駅B出口から徒歩5分