福岡市地下鉄薬院大通駅から徒歩6分、博多駅から車でも10分ほどのところにある薬院エリアは、しゃれた店が多い閑静な住宅街。浄水通りから1本入った通りから少し奥まった場所に、店名の染め抜かれた白いのれんが掲げられた『井本』がある。
料理長の井本達也(いもと たつや)氏は1986年生まれ。地元福岡の料理学校を卒業後、京都の日本料理店で7年間修業。2015年に29歳で『井本』を開業し、5年後には世界的グルメガイドブックで二つ星を獲得している。
料理で井本氏が最も大切にしているのは利尻昆布でとる「だし」。だしはすべての始まりとして、料理にはすべて一番だしを使用。野菜の炊き合わせにも一番だしを用いている。鰹節とマグロ節は蒸さずに削って使うことで、香りが立って味が残る効果をねらう。また、水は阿蘇の天然水を使用。やわらかく、昆布の味が出やすい。食材は、修業時代から京都で付き合いのあった業者や地元福岡の信頼ある業者に依頼し、季節折々の旬の魚や野菜のバランスを取りながらコースを構成する。たとえば夏ならばウナギやハモ。素材を生かし、食べ疲れしない料理を意図している。
日本酒は全国から約15種程度。地元福岡のものはじめ、井本氏が好きな一本でもあるという、料理を邪魔しないお酒をゲストの好みやそのときどきの料理に合わせて提供。グラス1杯ずつ多種類楽しむゲストも多い。ワインも豊富で、シャンパーニュ8種をはじめ主にブルゴーニュの赤・白をそろえる。
木の温かみを生かした端正なL字型カウンターのみ11席の店内は、どの席からも井本氏の手さばきを目の前に見ることができる特等席だ。碗はすべて輪島塗、器は京焼を中心に古染付や南京赤絵など骨董の器やバカラ、ラリックなどのガラス器。料理を載せる器にも井本氏の美意識が感じられる。家族やの記念日や親しい人との会食はもちろん、大切な方の接待にも期待を裏切らない。県外からの来訪も、博多駅から車での近さを考えると交通の便の良さも見逃せない。
井本氏は、料理と酒でゆっくりくつろぎ、ゲストと器やお酒の話がしたいと語る。そういう温かいもてなしの心も、『井本』での忘れられない時間を作ってくれるに違いない。
■アクセス
薬院大通駅から徒歩6分
博多駅からタクシーで10分