JR熊本駅から車で10分。市街地に隣接した、この新屋敷地区は、もとは細川家の家老の武家屋敷があった場所で、阿蘇の名水百選にも選ばれている源流とした一級河川の白川(しらかわ・名水百選に選定)と周囲の緑が目を和ませる。新屋敷公園そばにあるビルの1階にある『antica locanda MIYAMOTO(アンティカ・ロカンダ・ミヤモト)』は、石を積み上げた壁と木製のプレートが印象的なエントランスがゲストを迎える。店内は中庭に面し、半地下に掘り下げたことにより、庭の緑が目に美しく入るような設えで、まるで山深い森の山小屋を訪れたような心持ちになる。
シェフ宮本 健真(みやもと けんしん)氏は料理店を営む父のもとで料理人を志し19歳で渡伊、実家のレストランの店長をつとめたのち、2002年に『antica locanda MIYAMOTO』の前身『リストランテ・ミヤモト』を開業。2021年に現在地に移転した。
『antica locanda MIYAMOTO』では薪火を用いて焼き上げた熊本あか牛を中心に、熊本の食材を生かす料理を提供。あか牛は、東海大に所属していた先生方が生産者になっている。仕入れる肉の手当ては主に滋賀のサカエヤとともに取り組んでいる。また自家製のシャルキュトリ(加工肉)、地元の生産者から直接仕入れる野菜や球磨川の天然鮎などの川魚なども用いる。熊本は標高700mまで農業ができ、年間を通して何かしら収穫できる国内有数の農業県で、その食材の良さは折り紙付きだ。宮本氏は県産食材の良さを多くの人に伝えるため、熊本の世界農業遺産登録に奔走。2013年、熊本阿蘇地域は国内3例目の世界農業遺産に登録された。
『antica locanda MIYAMOTO』で薪火料理を始めたきっかけは2016年の熊本地震だった。電気やガスが止まると料理が作れないことを思い知った宮本氏は、炭火の残り火で野菜を焼いて、その味に驚いた。それ以後、野菜の生命力や料理の根源的な部分と向き合い、移転に際して薪火料理でより料理の本質を追求することを目指した。
ワインはイタリアワインを中心に、日本ワインでは主に九州の熊本ワイン、都農ワイン、宮崎の香月ワインズなどをそろえる。アルコールペアリングも設定。ノンアルコール飲料は熊本産茶葉で作ったウーロン茶や、阿蘇の野草のハーブティを提供している。
石と木が主体の内装は、8名の個室と10席のダイニングで構成。宮本氏が修業時代に2年間住んでいたチロルの山小屋をイメージしている。ゲストは家族連れや記念日など、お子様は日曜日であれば赤ちゃんでも可能だ。ゲストにくつろいでほしいという思いからつけられた「ロカンダ=旅籠」で、リラックスできるひとときを味わっていただきたい。
アクセス
熊本駅よりタクシーで10分