日本から遠く離れた南米・ペルーに、世界中から注目される名店『Central(セントラル)』がある。毎年行われる世界トップ50のレストランランキング2023年版で1位にランクインする快挙をなしとげた。シェフのヴィルヒリオ・マルティネス氏が作る料理の世界観もさることながら、ペルーの食文化を探求する研究室『マテル・イニシアティバ』、そこで得た調査結果や知見を料理に生かすというユニークなあり方も注目されている。その『Central(セントラル)』の世界観を日本で楽しめるのが『MAZ(マス)』だ。日本の食材に関心を持ったシェフが、2年の歳月を経てオープンした。場所は、東京メトロ永田町駅直結のビル「東京ガーデンテラス紀尾井町」。
シェフは、サンティアゴ・フェルナンデス氏。ベネズエラ出身で『Central(セントラル)』ではヘッドシェフとして、シェフ・マルティネス氏とともに働いてきた。
『MAZ(マス)』の料理の特徴は、東京にいながらにしてペルーの豊かな生態系を料理で体感できる点だ。ペルーの自然は日本とは大きく異なる。四季があり、季節が南から北へと平面を流れていく日本とくらべ、ペルーは季節という感覚がなく、アンデスの海中から海抜4000mまである標高によって季節が動く。その季節も、地球上にある32の気候帯のうち30が存在するといわれるほどバラエティに富んでいる。料理はそのペルーの生態系を9つ、9皿の料理で表現する。たとえば何種類ものジャガイモやカカオなどの農産物、また現地のアーティストがこの店のためだけに作った食器や自然の音まで、味覚のみならず、視覚・聴覚を用いるプレゼンテーションは、ペルーの自然や文化、芸術にまで触れることができる新しい美食体験だ。食材は8割が日本食材を使用。日本国内で育てられたアンデス原産のイモや現地の淡水魚の代わりに秋田のイワナを用いるなど、日本では食べ慣れた食材が装いを変えて現れるさまに驚くだろう。
料理に合わせるワインはチリなど南米のものを中心にそろえる。ペアリングはアルコール・ノンアルコールともに設定。『Central(セントラル)』の研究室『マテル・イニシアティバ』で作られるカクテルやコンブチャなどのインフュージョンを用意。高度が高いところの料理には高度の高い地区でできたワインを合わせるなど、料理から風景が感じられるような工夫をしている。
ほんのり暗く、モダンでミステリアスな店内は、テーブルが7卓20席。壁にはペルーで古代から舟や家を作るたに使われてきたトトラ葦を使ったアートが掛かり、ペルーという異世界への旅心をいざなう。
新しい食体験をしたい、ペルーを感じてみたいという知的好奇心を刺激されるひとときを、味わっていただきたい。
■アクセス
赤坂見附駅D出口より徒歩1分