高級別荘地として知られる軽井沢の森のなか、木々の緑に埋もれるように建つ一軒家のレストラン『エルミタージュ ドゥ タムラ』。店名に冠した、フランス語で“隠れ家”を意味する“エルミタージュ”の言葉の通り、現世を離れた幻想的な雰囲気を漂わせている。2000年に田村良雄シェフが開業し、長らく軽井沢の名店として人気を集めてきたが、2017年3月に大塚哲也シェフが引き継いだ。大塚シェフは、恵比寿『マッシュルーム』で3年働くうち、自然環境に恵まれた土地のレストランに興味をもち、田村シェフのもと『エルミタージュ ドゥ タムラ』で修業。師匠の味を守りつつ随所をブラッシュアップさせ、名店の後継者としてレストランの名声をさらに高めることに成功している。
豊かな自然の中、季節ごとに旬の恵みを集結させた最高の一皿で、あまたの美食家を魅了してきた同店。地元の農家をはじめ全国よりその時々に最も美味しい食材を集め、オリジナル性の高い料理を供する。例えば、夏の風物詩として6月から9月に提供するスペシャリテ「桃の冷たいスープ」では、完熟の桃にコンソメを合わせ、桃の味を活かしつつクリアな澄んだ味わいを実現。完熟の桃でなければこの味にならないと、旬を追って南から北へと産地を変えて仕入れをおこない、提供直前にミキサーにかけてフレッシュな香りと味わいを保つ。手間を惜しまず、真面目な仕事ぶりによって生み出される逸品である。ソムリエも2人おり、フランスワインを中心に、地元長野産のワインも用意する。
受け継ぐだけではなく、変えていく部分もある。料理は工程を見直すなどより手間をかけ味わい深く。店舗はテーブル席23席、最大4~5名収容の個室を2室完備するが、個室部分は2018年に一部リノベーション。器などもシンプルで上質なものに少しずつ入れ替え、より料理が引き立つように。またスタッフ間のチームワークを大事にし、皆でゲストをもてなすという気持ちを全面に打ち出す。受け継がれ、さらに磨かれていく名店の味とおもてなし。四季折々に訪れたい、とっておきの一軒である。
■アクセス
しなの鉄道 中軽井沢 タクシー10分