東北の玄関口、「杜の都」仙台駅から車で15分。仙台市内の中心部を大きく蛇行して流れる広瀬川のほとりに『楽・食・健・美 -KUROMORI-』がある。
黒を基調としたモダンな一軒家の中に入ると中央にカウンター。その中心で鍋を振るのは、シェフの黒森洋司(くろもり ようじ)氏だ。宮城県の名産であるフカヒレ・乾鮑・干し海参をふんだんに用いた、宮城中華とでもよぶべき黒森氏ならではの中国料理を生み出す。黒森氏は神奈川県出身。都内の中国料理店で香港出身のシェフから広東料理・広東点心を学び、28歳で、香港の広東料理の名店『福臨門魚翅海鮮酒家』二子玉川店の料理長を務める。2011年の東日本大震災を機に、料理人としてできる復興支援を模索し仙台に移住、『楽・食・健・美 -KUROMORI-』を開業した。黒森氏は国際的グルメガイドブックにて2023年「明日のグランシェフ賞」を受賞した。
江戸時代より中国で『参・鮑・翅』と称され、中国料理に欠かせない高級食材とされる海参(ナマコ)・鮑(アワビ)・翅(フカヒレ)。幕府にとって金銀の代わりになったほど重要な輸出品だった歴史ある食材は、いずれも気仙沼を中心として宮城県内の特産品だ。特に気仙沼ではフカヒレの原料となるサメの国内水揚げの8割以上を占め、その加工会社とともに宮城は発展してきた。黒森氏はそれら加工に携わる人々と密接に付き合い、ヒレを無駄なく使うアイデアを共に考えるなど、事情を知り尽くしている。名物「青鮫尾びれの煮込み」は、高級食材というだけでないストーリー性をもち、黒森氏にしかできない料理の説得力を生む。金華ハムを思わせる自家製の生ハムでとるだしとフカヒレの出逢いは、ここでしか楽しめない味わいだ。
料理の食材はこれら高級食材のほか、「MIYAGI」と名付けられた季節ごとの県産野菜のみを用いた料理、またコースの中盤に出すフカヒレの煮込みに添えるご飯も人気だ。松茸ごはん、栗ご飯、山菜ご飯など、月に20回替えることもあるという季節ならではの逸品を目指して訪れるゲストも多い。料理に合わせるドリンクとして、フランスやイタリアのワイン、紹興酒、また季節感を感じられる宮城をはじめとした東北の日本酒をそろえる。ペアリングは相談の上注文可能。アルコールとノンアルコールなどの組み合わせや量の加減にも応じてくれる。ノンアルコールドリンクは中国茶や発酵茶、宮城の藍茶などノンカフェインのお茶をそろえる。
白を基調としたモダンな店内にはカウンター10席。どの席からも調理する黒森氏の姿が見え、音と香りがただようライブ感あふれる雰囲気で楽しませる。お子様は原則として小学3年生以上、大人と同じ料理がいただける場合は来店可能。カウンターの後方の窓からは広瀬川と、その向こうの仙台の夜景が見える。美食を愛する人たちがKUROMORIの訪問のために仙台を訪れる例も多く、海外ゲストについては英語メニューを用意している。オール宮城の食材がテーブルに並ぶまでの物語(ストーリー)を繊細に構成し、「ここにしかない」新しい中華料理を味わうために、ぜひ仙台を訪れてみてはいかがだろうか。
■アクセス
仙台駅よりタクシーで15分程度
東北本線・東北新幹線 仙台駅下車
仙台市営バス・宮城交通 向山二丁目バス停下車 徒歩3分