Pocket Concierge

【特別レポート】
Dining Crossover produced by 傳
第3回 「傳 × villa aida」

アジア圏すべてのレストランを調査対象とするランキング「アジアのベストレストラン50」でNo.1に君臨する日本料理店『傳』店主・長谷川在佑さん。春も終わりかけたころ、長谷川さんがホストとなり、彼自身が尊敬してやまない世界のトップ料理人を迎えて共にガストロノミーを創造する特別企画「Dining Crossover produced by 傳」第3弾が開催されました。これは、アメリカン・エキスプレスとそのグループ会社であるポケットコンシェルジュが主催するイベントで、プラチナ・カード®以上のカード会員様が参加対象です。

「料理でみんなを笑顔にして幸せをつなぐ」。この想いが長谷川さんのすべての行動の指針となっています。「2年半もの長い間、僕たち飲食店も辛かったですが、いつも僕たちを支えてくれている生産者のみなさんもほんとうに大変な時期が続きました。おいしい料理を通じて、日本にはたくさんの素敵な生産者さんがいることを知っていただきたい。そしておいしい料理をお客様に食べていただくことで、お客様ご自身も飲食に関わるみんなも元気にしたい。そのきっかけになればと、このイベントを企画しました」(長谷川さん)。

第3回のコラボレーターは、和歌山・岩出の一軒家菜園レストラン『villa aida(ヴィラ アイーダ)』オーナーシェフの小林寛司さん。ダイニングとファームが隣接するとびきりの環境で、自ら育てる野菜やハーブと対話しながら唯一無二のひと皿を創り出す小林さんを迎えて、長谷川さんはどんな料理を披露したのでしょうか。カラフルな紫陽花が艶やかに彩る空間で開催された宴のもようをレポートします。

※アメリカン・エキスプレスは、ニューノーマルのなかで前進しつづけるレストランや生産者を応援しています。


『傳』 長谷川 在佑

日本料理店『傳』店主。家庭の温もりを大切にしながら、伝統的日本料理を洗練と親しみやすさを合わせ持つガストロノミーへと昇華させ、“和食”の魅力を世界に発信する第一人者。2021年版「世界のベストレストラン50」11位、2022年版「アジアのベストレストラン50」1位、接客を評価する「アート・オブ・ホスピタリティ賞」を受賞。有名グルメガイド二つ星。最新刊「普段着の和食がおいしい理由」(新星出版社)。

『villa aida(ヴィラ アイーダ)』小林 寛司

『villa aida(ヴィラ アイーダ)』オーナーシェフ。Farm to Tableやサステナブル、ローカルガストロノミーという概念を時代に先駆けて日本に広めた第一人者。2020年『第11回辻静雄食文化賞』受賞。2021年『TOP 100 BEST VEGETABLES RESTAURANTS』18位。2022年版「アジアのベストレストラン50」14位。有名グルメガイド二つ星。著書に『自然から発想する料理』(柴田書店)。

心も身体も軽やかに清らかに。東京の夜にやわらかく香る春の風

伝統と格式を重んじる日本料理にエンターテインメントを持ち込み、風通しのよい世界に変えてみせた『傳』。おもてなしを含めた長谷川さんの自由なスタイルは、日本料理の枠を超えて飲食業界に衝撃を与えました。「僕は好きなようにやらせてもらってきたので、僕よりフリースタイルの料理人なんていないだろうと思ったら、和歌山にいました」(長谷川さん)。長谷川さんをも上回る何者にもとらわれない自由な料理人・小林寛司さんの繊細で美しい世界観を、『傳』を通してなるべくそのままお客様にお伝えしたい。そんな長谷川さんらしく、小林さんのつくる空気にまで寄り添うような、愛情のこもったメニューが誕生しました。

アミューズ
ナスタチウム もみじがさ キャラメル
アイーダ米 八女茶 オゼイユ

『villa aida』のはじまりを彷彿させる、指で摘んで食べるのが楽しいフィンガーフードのアミューズ。奥は、富士山の麓で採れた山菜のもみじがさ(しどけ)に出汁と『傳』の自家製ポン酢を含ませたものを、甘みより苦味を感じられるキャラメルソースと共にナスタチウムの葉で包んで味わいます。手前は、アイーダ米を使ったサクサクのライスチップスに、高温で蒸してから『傳』の出汁とポン酢で味付けした八女茶の新芽をのせ、オゼイユを添えたひと品。ライスチップスには、『villa aida』ならではの自家製調味料であるお茶のパウダーがまぶしてあります。ペアリングは『傳』の定番スパークリング、フランチャコルタ「カ・デル・ボスコ」。

茶碗蒸し 涙豆 蕗味噌 茗荷竹 ディル

スペイン・バスク地方で親しまれている、早摘みした極々小粒のそら豆が主役のひと品。一年のうちほんの短い期間だけしか味わえない『villa aida』の春の風物詩で、このイベントでの提供が今年最後となりました。名前の通り涙のような独特のフォルムで、プチッと弾ける食感と、まだ豆っぽい匂いのない品のいい甘さが特徴。「緑のキャビア」と呼ばれるこの希少な豆を、出汁の効いたふるふるの茶碗蒸しにたっぷりのせました。合わせるのは、春の清々しい香りがリンクする『傳』の蕗味噌。

ペアリング

ペアリングは、アルコールは『villa aida』と和歌山つながりでもある「本紀土 純米大吟醸」。写真のカモミールの香る桂花烏龍茶のノンアルペアリングもすばらしい仕上がりでした。

傳タッキー

某ファストフードチェーンを思わせる遊び心満点の『傳』のシグネチャーディッシュ。日本料理の「おしのぎ」の位置付けで、鳥手羽におこわを詰めてからりと揚げるのが定番で、このおこわをどう調理するかも毎回の見どころのひとつ。今回は『villa aida』周辺で自生しているよもぎをたっぷり混ぜ込みました。野菜やハーブ、野草の持つ自然な苦味を、ほんの少しのたんぱく質や脂と合わせることで苦味をうま味に変換し、圧倒的なおいしさに変える、魔法のような小林さんの技術力ならではの仕上がりに。ペアリングは『villa aida』マダムの有巳さんが好きなつくり手だというイタリア・フリウリ州のナチュラルワイン「vodopivec2013」。

お造り キンメダイ コリアンダー インゲン 実山椒

5日間熟成させてうま味を増したキンメダイに、醤油ではなく醤油に漬けたコリアンダーの実を合わせたスパイスの香るひと皿。さらに3粒だけのせた生の実山椒が鮮烈な刺激を加えます。この存在感に負けていないのが、絶妙にゆで上げた心地よい歯触りのインゲン。日本料理のように色と芯を残すのではなく、ヨーロッパのようにくたくたになるまで煮るのでもなく、ぎりぎりの火入れでおいしさの頂点に達する「小林さんの技術力の高さが表れています」と長谷川さん。コリアンダーの実の醤油漬けが持つ爽やかな風味に合わせて、米のうま味がありながらさっぱりとした「水芭蕉 夏酒 純米吟醸 おりがらみ」を合わせました。

傳サラダ「畑の様子」
villa aidaバージョン

サラダに食べごたえを出す食材として小林さんが選んだのは高野豆腐。『傳』の出汁を含ませて焼き色をつけた高野豆腐は、あえてやわらかく煮たズッキーニや揚げびたしにしたピーマン、素揚げしたにんじんの花などと調和して、ひと口ごとに味わいが変わります。ここでひと際煌めきを放っていたのが『villa aida』自家製の柚餅子。ごく小さなダイスに刻まれてさりげなく混ぜられていた柚餅子の可能性の高さを感じずにいられません。ワインは、小林さん好みのシチリアのナチュラルワイン「Arianna Occhipinti SP68」。ミネラル感と塩味が出汁の風味にもマッチする、和食とも相性のいい覚えておきたいワインです。

山菜 レンズ豆 クロムツ さや大根

「クロムツの脂とうま味をソースとして、山菜を味わってください」。小林さんのそんな言葉と共に登場したひと皿の主役は、こごみ、うるい、タラの芽、こしあぶらといった、それぞれが的確な温度や技術で調理された山菜たち。サイドはわさびの葉の醤油漬けと鳥出汁で炊いたレンズ豆で、クロムツはソース。なんてフリースタイル。「高級魚のクロムツは主役で野菜は添えもの」というゲストが当たり前のように思い込んでいた固定観念をひっくり返すものでした。これにイタリア・トスカーナ州のサンジョヴェーゼ「Sanguineto」を合わせたペアリングは、「魚料理に赤ワインがこんなに合うなんて」と、これまたゲストの意表を突き大好評でした。

新生姜に添えたアイーダ玄米の土鍋ご飯

主役はいまがおいしさのピークを迎えた小林さんが大好きな『傳』特製のガリ。添えものとして薄切りにするのではなく、存在感を出すために立体的にカットしています。ガリを引き立てるために考えられたのが、アイーダ米の玄米を土鍋で炊き、揚げた江戸前の穴子と桜海老を混ぜ込んだ天ばらご飯。天ばらにすることで、ガリと共に玄米の持つ香ばしいおいしさがより一層際立ちます。食材を丸ごと使い切ろうと、お造りで使ったキンメダイのアラでみそ汁の出汁を取りました。合わせたのは長崎の食用米「にこまる」を使った「飛鸞 HIRAN」。米の風味が玄米とリンクして、締めのお食事になるどころか、お酒もご飯もおかわりしたくなるペアリングでした。

パースニップわらび餅 青梅 じゅんさい 黒蜜

日本料理からひらめきを得て、パースニップ(にんじんに似た根菜)からわらび餅をつくろうという発想がまずすごい。『villa aida』の同郷の仲間「蔵光農園」から届いた今年初ものの青梅をコンポートにして、パースニップのわらび餅と『傳』の黒蜜に漬けたじゅんさいを添え、コンポートのシロップでつくったグラニテでふんわりと覆い、ビオラの花びらを散らしました。いくつもの繊細な食感と異なる甘さがレイヤーのように重なった、食べて消えてしまうのが惜しいほど美しくて儚い小林さんらしい作品。

山椒のラムネ

『villa aida』で定番の山椒が香る手づくりのラムネ。粉糖、山椒オイル、コーンスターチなどの材料を、『傳』ではすり鉢を使って長谷川さんが丁寧に均一にすり合わせ、すずらんと四つ葉のクローバーの型で抜きました。ほうじ茶と共に。

イベントを終えて

「(傳タッキーがあるから)これ以上肉料理はいらないね」。そんな会話から始まった今回のメニューづくり。「以前は、目の前にある野菜を使ってどうクリエイティビティを発揮するかを考えていた時期もありましたが、いまは僕の料理を食べてくれる人が、季節の野菜を食べることで心身のバランスを整えて健康になってほしい。そんな思いを込めて料理に向き合っています」と小林さん。「おいしい料理を楽しく食べることでお客様に元気になってほしい」という長谷川さんと目指すところは同じです。

今回は「小林さんの世界観とフォアグラは対極にある」と、長谷川さんはあえてシグネチャーディッシュのひとつ「傳 最中」をお休み。季節のハーブを使ったアミューズから始まるという、いつもの『傳』からは想像のできないスタートとなりました。長谷川さんも小林さんも、そのときそこにあるもので料理をつくり、時にはお客様の様子に合わせてその場でレシピを変えることもあるほど、ライブ感のある料理が得意なタイプ。あらかじめ料理の細部まで決め込むことはせず、菜園の様子を見ながらメニューを構成したそうです。そのためこの日の料理は、アイーダファームの一部をそのまま味わったような感覚になりました。

また、この日はサービスとして『villa aida』マダムの小林有巳さんも参加。『傳』女将・長谷川えみさんとふたり揃って華やかにお客様をお迎えするなど、コラボレーションならではのシーンも見られました。注目はペアリングのドリンク。ワインはマダムの有巳さん、日本酒やノンアルコールドリンクはえみさんと、実はドリンクで女性たちによるコラボレーションが行われていたのです。東京にいながらも大地の優しさと温かさを感じたひと時。「なんか魂が浄化されました」。お客様のこのひと言が、このイベントのすべてを物語っていました。

「Dining Crossover produced by 傳では、毎回そのときだけしか味わえない特別なメニューと空間を創造します。ゲストシェフは、僕自身がリスペクトしていて、その料理哲学に共感している人です。これまで見たことのない刺激的なコラボレーションを開催しますので、次回も注目してください」(長谷川さん)。

第4回のゲストは、数々のシグネチャーディッシュを持つ『Ode(オード)』生井祐介さん。「Odeはクールな世界観を確立しているので、それを打ち壊すために傳が乗り込みます」と長谷川さん。パンクな一面を引き出し、これまで見たことのない『Ode』の新しい表情を期待できるという一日限りのこの機会を、どうぞお楽しみにお待ちください。

【撮影・文】江藤詩文​

アメリカン・エキスプレスでは、本イベントを含め、あらゆるダイニング特典をご紹介しています

参加レストランのご紹介

外苑前駅から徒歩7分ほど、外苑西通り沿いのビル1階に店を構える日本料理店『傳』。料理と接客を通して“人を楽しませること”を追求し、家庭料理の温もりが伝わるような、新しいスタイルの日本料理店を築き上げる。木の温もりを感じさせるウッディーな店内は、14名が座れるロングテーブル、2~4名掛けのテーブル席、個室があり、記念日やデートなど、特別な日のご利用に最適。ぜひ一度、“長谷川流”の料理とおもてなしをご堪能いただきたい。

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villa aida(ヴィラ アイーダ)

畑と厨房、食卓が一体となった野菜が主役の一軒家菜園レストラン。年間150種類以上もの野菜やハーブを夫婦で育て、日々移り変わる植物の持つ一瞬の味わいを鮮やかなフレーミングで芸術的なひと皿へと昇華させる。そのジャンルを超越した独創的な料理は国内外で高く評価され、グルマンのみならずプロの同業者からも常に注目を集めている。予約は1日1組で最大6名まで。美しいリビング、ダイニング、ガーデンを贅沢に移動して寛ぎながら、ゆったりと流れる極上の時間を楽しめる。関西国際空港からタクシーで30分。

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ポケットコンシェルジュとは

レストラン検索からご予約、会計までワンストップでご提供する「ポケットコンシェルジュ」。食に精通したスタッフが自信を持ってお届けできるお店だけを厳選し、ご紹介。名店ならではの質の高い料理、そして充実のサービスでお連れ様にも満足いただけます。
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