Pocket Concierge

【特別レポート】
Dining Crossover produced by 傳
第6回 「傳 × Alter Ego」

2022年、アジアの全レストランを対象とするランキング「アジアのベストレストラン50」で首位に立った日本料理店『傳』店主・長谷川在佑さん。先ごろ、長谷川さんがホストとなり、同じ志を持つ料理人を迎えて共にガストロノミーを創造する特別企画「Dining Crossover produced by 傳」第6弾が開催されました。これは、アメリカン・エキスプレスとそのグループ会社であるポケットコンシェルジュが主催するイベントで、プラチナ・カード®️会員様が参加対象です。

「料理でみんなの笑顔と幸せをつなぐ」。これが創業以来変わらない長谷川さんの活動の指針です。「料理を通じて、国内外の食を愛する多くの方に、日本にはたくさんの素敵な生産者さんがいることを知っていただきたい。そしておいしい料理を食べていただくことで、お客様ご自身も飲食に関わる人々も元気にしたい。そのきっかけになればと、このイベントを企画しました」(長谷川さん)。

第6回(2022年9月)のコラボレーターは、東京・神保町のイタリア料理店『Alter Ego(アルテレーゴ)』ヘッドシェフの平山秀仁さん。ケイトウとバラの実、鈴バラの実をデザインしたフラワーアートが彩る空間で、“弟分”として日ごろから親交のある平山さんを迎えて、長谷川さんはどんな笑顔の食卓を演出したのか。特別な宴のもようをご紹介します。

※アメリカン・エキスプレスは、ニューノーマルのなかで前進しつづけるレストランや生産者を応援しています。


『傳』 長谷川 在佑

日本料理店『傳』店主。家庭の温もりを大切にしながら、伝統的日本料理を洗練と親しみやすさを合わせ持つガストロノミーへと昇華させ、“和食”の魅力を世界に発信する第一人者。2022年版「世界のベストレストラン50」20位(アジア最高位)、2022年版「アジアのベストレストラン50」1位、接客を評価する「アート・オブ・ホスピタリティ賞」を受賞。有名グルメガイド二つ星。著書に『普段着の和食がおいしい理由』(新星出版社)など。

『Alter Ego(アルテレーゴ)』平山 秀仁

イタリア料理店『Alter Ego(アルテレーゴ)』ヘッドシェフ。調理師学校を卒業後『リストランテ・ヒロ』を経て28歳でイタリアに渡り、アルバ郊外のレストランで伝統料理や郷土料理を学ぶ。日本人として初めてイタリアで有名グルメガイドの星を得たミラノの『Ristorante TOKUYOSHI(リストランテ トクヨシ)』(現『Bentoteca』)オーナーシェフ・徳吉洋二氏に師事し3年間スーシェフを務める。徳吉氏が“自身の分身”と名付けた『Alter Ego(アルテレーゴ)』の開店にあたり厨房を託されて帰国。

『傳』にイタリア文化を持ち込んだ演出も楽しい豊かな食卓

初心者には敷居が高いという印象を持たれがちだった日本料理を、伝統を守りつつ「みんながおいしく楽しめる」料理へと革新し、若い世代や外国人へも広く門戸を開き、和食の魅力を世界に広めた第一人者である『傳』の長谷川さん。日本料理とイタリア料理、ジャンルは異なれどそんな『傳』のあり方に憧れ「コラボ相手に選ばれて嬉しい」と話す平山さんは「Dining Crossover produced by 傳」シリーズ最年少のコラボレーターです。イタリアワインへの愛に溢れたソムリエ・松本時宙(ときひろ)さんをはじめとするチーム全員と、お店で大切に使っているイタリア最高峰の老舗ブランド「ベルケル」のスライサーを携えて万全の体制で登場。和食にイタリアンを融合したメニューとライブ感のある演出でゲストを大いに盛り上げました。

pizza delivery

デリバリーピッツァをモチーフにしたボックスを開くと現れるのは、みずみずしい野菜をトッピングした米粉のチップス。サクッと揚げた生地の上に、ピッツァを構成するイタリアンな要素=トマトソース、ブッラータチーズ、モルタデッラ。さらに重ねたのは、なんと傳サラダ「畑の様子」です。味つけに使われる塩昆布のうま味は、チーズと相性がいいとか。ルッコラや辛子菜、セルバチコといったグリーン野菜のほか菊芋の花、コスモスの花、ニラの花など秋のエディブルフラワーが美しい。合わせるのは質の高いぶどうを収穫できた年だけつくられるフランチャコルタ Vallentino Majolini Brut 2011 Majolini。瓶内で10年熟成させたはちみつのような香りとふくよかでリッチな味わいが特徴です。

DFC

デリバリーピッツァに続いて、某ファストフードがモチーフのおなじみ「傳タッキー」が登場。どちらも庶民的なカジュアルフードを装いながら、その実体は上質なガストロノミーという長谷川さんらしいウィットに富んだ流れです。メニューを考案するにあたって、真っ先に「傳タッキー」の中身を考え始めたという平山さん。「イタリアらしさを表現しつつまだ誰もつくっていない味を」と、イカスミのリゾットならぬイカスミのおこわにチャレンジしました。オリーブオイルでしっかりと炒めた玉ねぎの甘みと白ワインで煮込んだイカの身の甘さが鳥出汁のうま味と相まって、和にも寄り添う味わいに。イタリアンパセリとレモンピールでイタリアの風味をプラスして仕上げました。

生ハム揚げパン

ここでいよいよ「ベルケル」のスライサーの出番がやって来ました。生ハムと揚げパン「ニョッコフリット」の組み合わせはエミリア・ロマーニャ州あたりでは定番。揚げパンは千葉・木更津の水牛モッツァレラの造り手として有名な竹島英俊さんのホエーを、小麦粉、ラードと合わせて内部が空洞になるように軽やかに揚げた揚げたての熱々、パルマ産の24カ月の生ハムは薄くなめらかにスライスした切りたてのふわふわ。揚げパンに生ハムをのせると、生ハムの脂がやわらかく溶けはじめ、香りとうま味が増幅されるのです。この罪深いおいしさといったら、もう。ペアリングは、ここまでがフランチャコルタ。平山さんのリズミカルな手は止まらず、ここからさらに生ハムワールドが広がっていきます。

生ハムとお造里

『Alter Ego』の開店当初のシグネチャーディッシュだった生ハムとマグロの漬けの組み合わせ(現在は事前リクエストで提供可)。熟成した肉のうま味と魚のうま味のハーモニーは印象的で、当時大きな話題となりました。このひと皿が大好物という長谷川さん。マグロに負けないおいしさを持つ静岡のカンパチを4日ほど寝かせることで軽く水分を抜いてねっとりとした食感を出し、自家製の合わせ醤油でさっと漬けにして切り立ての生ハムをまとわせました。前出の揚げパンは熱を加えて生ハムのうま味を活性化、お造りは方向性の異なる魚のうま味を重ねて生ハムのうま味を増幅と、生ハムの持ち味を多角的に表現しています。この料理のペアリングは女将・長谷川えみさん(以下、えみさん)が担当。ファーストアタックがメロンのような香りをもつ秋の限定酒「阿部勘 純米吟醸 まねき」は口あたりがよく、生ハムにもカンパチにも寄り添いました。

カジキマグロのカツレツ サルサヴェルデ

カジキマグロはシンプルにグリルしたり、ハーブを混ぜたパン粉をつけて揚げ焼きにしたりとイタリアでも親しまれている魚です。今回は、新鮮で身が締まっている代わりに脂はそれほど多くない静岡産のカジキマグロが手に入ったので、トンカツのように厚切りにしてカツレツに仕立てました。6日間寝かせてうま味を増やし、身を少しやわらかくしたカジキマグロに衣をつけ、中心部がレアになるように白絞油でさっと揚げました。この断面のグラデーションの美しさ。ソースはたっぷりのパセリにアンチョビ、ケッパー、オリーブオイル、ビネガーをブレンド。ワインはEtona Bianco Pietra Marina 2016 Benanti 。シチリア東部の火山地帯エトナ産で、海風と火山性の土壌に由来するキリッとしたミネラル感が特徴です。

茄子田楽 ラグーグラタン

この季節に旬を迎えるナス。イタリアではチーズと合わせてグラタン風、『傳』では出汁で炊いて田楽にすることが多いとか。田楽みそとチーズは発酵がもたらすうま味がリンクして相性抜群。そこから和とイタリアが合体したひと皿が生まれました。『Ristorante TOKUYOSHI』(現『Bentoteca』)が店を構えるミラノとロンバルディア州の郷土料理である「オッソ・ブーコ」を、仔牛のすね肉ではなくしっぽを白ワインで煮込んだソースで表現。これを和の出汁をたっぷり含んだナスと合わせてグラタン風に仕上げ、赤みそがベースの田楽みそをかけ、パルミジャーノを削りました。ペアリングはワインと日本酒の2種類からお好みで(両方もあり!)。ワインは新樽で熟成させたバニラのような乳酸発酵の香りを楽しめる自然派のオレンジワイン、シャルドネ Le Chat 2020 Le Coste、日本酒は月ごとに原料の米が変わる秋田の地酒「まんさくの花」の巡米(じゅんまい)酒。

イワシのつみれ ケッパートマトスープ

ふたを外すと澄んだ汁につみれがひとつ。これぞ日本料理の引き算の美学と思いきやひと口飲んでびっくり。この透明なスープはカツオ出汁にケッパーのスープとトマトのコンソメを合わせたもの。トマトはペースト状にしたものを一度凍らせて解凍しながら透明な液体部分だけを取り出しました。ピエモンテ州にある食科学大学で、みその代替としてトマトを使った“ズッパ デ ミソ(ミソスープ)とベントー”のプレゼンテーションを行った長谷川さんの経験から生まれたアイデアです。トマトとケッパーの風味が青魚のクセをうまくカバーするため、イワシは中骨まで丸ごとを二度挽いてふわふわのミンチにしただけで、塩さえ加えていません。これをさっとスープにくぐらせてお椀に入れ、熱々のスープを注いで余熱で仕上げました。見た目は和食、味わうとイタリアンの楽しいギャップ。ワインはシチリアのTerre Siciliane Ava 2021 Flavia。

天然キノコのご飯 鴨ロースト&鴨コンソメ

ご飯に肉をどっさりのせて甘じょっぱいタレをかけた、見た目はいわば丼セット。気取りのないカジュアルなスタイルながらその内容は実に豪華です。肉は青森の「銀の鴨」という赤身のブランド鴨を燻製、低温のコンベクション、高温のフライパンを使い分けて燻製の香りをまとわせ、皮はパリッと身はジューシーに焼き上げたもの。これを受け止めるご飯は、長谷川さん自身が山で採取した舞茸や松茸、花びら茸、ヤマドリタケ、タマゴタケなど10種類以上のキノコを油でなじませるように加熱して出汁で炊いた土鍋ご飯に混ぜ込みました。汁ものは鴨のもも肉でとった鴨のコンソメ。女将・えみさんお手製のぬか漬けを添えています。ワインも料理にふさわしいものをと“イタリアワインの王様”と称されるBaroloのCiabot Manzoni 1995 Silvio Grassoを前日から抜栓して温度を管理し最高の飲みごろに整えました。

いちじくのパンパネッラ

いちじくの白い樹液には牛乳を分離凝固する作用があり、南イタリアではリコッタチーズ作りに使われるそう。ここからヒントを得て牛乳と濃厚な生クリーム、いちじくの葉を合わせて水切りし、いちじくの葉の香りのリコッタクリームをつくった平山さん。長谷川さんがつくったいちじくの赤ワイン煮と合わせると、もぎたてのフレッシュないちじくを丸ごと味わいつつ、同時にうんと手数のかかった繊細なドルチェを味わっているような不思議な満足感をもたらします。食後酒も甘口でしっかりとした、いちじくの果実味とつながる赤ワインのリキュール Antico Liquorvino amarascato Duca di salaparutaといちじくと相性がいいバローロのグラッパ、Grappa di barolo Roserva speciale 2008の2種類を用意しました。

イベントを終えて

チーム全員にプラスして愛用の「ベルケル」まで、この日のためだけにお店ごと引っ越ししたような『Alter Ego』。その布陣を見ただけでこのイベントを大切に思う平山さんとチームの熱意が伝わってきました。

平山さんの料理を長谷川さんはこう評します。「フランス人が日本の食材を使って料理をしてもフランス料理らしさを感じさせるように、料理人のルーツと料理は切っても切り離せないものです。ところがヒデ(平山秀仁さん)は、日本人が日本の食材を使って料理をしているのにイタリア料理の本質が中心にあって料理にブレがない。僕はもともとパスタなどイタリアンが好きなので、ヒデの料理はいいなと思います」

料理に向き合う時は「イタリア人が日本の食材でイタリア料理をつくるならどうするか」を脳内回路に組み込んでいるという平山さんは、語らずともそれを理解してもらっていたことがとても嬉しそう。「このコラボシリーズで最年少という若さを生かして、お客様の様子を見ながらどんどんヒデらしさを前に出して挑戦していこう」と長谷川さん。しっかりと食べ応えのある土鍋ご飯のお食事も用意しているけれど、ヒデがいるならパスタも食べたいのでは?とお客様にお伺いしたところ、なんとご飯を完食したにも関わらず全員がパスタをご希望。平山さんによるスパゲッティ・ポモドーロがサプライズで振る舞われました。

また「ヒデの料理と松本くんのワインは共にあるべき」とワインのセレクトを任されたソムリエ・松本時宙さんは女将・えみさんとドリンクでコラボ。えみさんは長谷川さんの、松本さんは平山さんの料理を知りつくし「ドリンクが前に出るのではなく料理を引き立てるペアリングをつくりたい」というスタンスを共有しているため、とても楽しくワインやお酒を選んだそう。普段からノンアルのペアリングも魅力的ではありますが、今回はお酒好きにとっては最高のペアリング体験となりました。

リピートされるお客様も増え、回を重ねるごとに加速していく「Dining Crossover produced by 傳」では、その時だけしか味わえない特別なメニューと空間を創造しています。ゲストシェフは、僕自身がこの人となら新しい世界をつくれると確信している料理人仲間です。これまでにない刺激的なコラボレーションを開催しますので、次回も注目してください」(長谷川さん)。

第7回は「Dining Crossover produced by 傳」シリーズ初となる和食同士のコラボレーション。福岡の名居酒屋『藁焼 みかん』の末安拓郎さんと共に福岡で開催します。居酒屋の気軽さがありながら別次元の料理を提供する末安さんは、ゲストを楽しませるパフォーマンスにも長けた接客のプロ。「福岡の祭りの夜」をテーマに、長谷川さんと末安さんがどんなユーモアを見せるのか。一回限りの“お祭り騒ぎ”をどうぞご期待ください。

【撮影・文】江藤詩文​

アメリカン・エキスプレスでは、本イベントを含め、あらゆるダイニング特典をご紹介しています

参加レストランのご紹介

外苑前駅から徒歩7分ほど、外苑西通り沿いのビル1階に店を構える日本料理店『傳』。料理と接客を通して“人を楽しませること”を追求し、家庭料理の温もりが伝わるような、新しいスタイルの日本料理店を築き上げる。木の温もりを感じさせるウッディーな店内は、14名が座れるロングテーブル、2~4名掛けのテーブル席、個室があり、記念日やデートなど、特別な日のご利用に最適。ぜひ一度、“長谷川流”の料理とおもてなしをご堪能いただきたい。

『傳』をご予約いただける「KIWAMI 50®」はこちら

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Alter Ego(アルテレーゴ)

東京・神保町に2019年2月にオープンした『Alter Ego(アルテレーゴ)』。オープン当初は“Equilibrio”(バランス)というテーマのもとコース料理を提供していたが、コロナ禍をきっかけに本店同様アラカルト営業に切り替える。イタリアでは現地の食材を使いイタリア人に合わせた和食を、東京では国産食材を使い日本人に合わせたよりティピカルなイタリアンを提供し、イタリアを感じることができるような店づくりを心掛けている。一軒家の店内は、1階はカウンター8席のみ、2階の個室では10歳以上のお子様も利用可能。家族や友人同士などで、食を愉しむ豊かな時間をお過ごしいただきたい。

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ポケットコンシェルジュとは

レストラン検索からご予約、会計までワンストップでご提供する「ポケットコンシェルジュ」。食に精通したスタッフが自信を持ってお届けできるお店だけを厳選し、ご紹介。名店ならではの質の高い料理、そして充実のサービスでお連れ様にも満足いただけます。
ポケットコンシェルジュは、アメリカン・エキスプレスのグループ会社です。

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