Pocket Concierge

【特別レポート】
Dining Crossover produced by 傳
第7回 「傳 × 藁焼 みかん」

アジアの全レストランを対象とするランキング「アジアのベストレストラン50」でトップに輝く日本料理店『傳』店主・長谷川在佑さん。先ごろ、長谷川さんがホストとなり、同じ志を持つ料理人を迎えて共にガストロノミーを創造する特別企画「Dining Crossover produced by 傳」第7弾が開催されました。これは、アメリカン・エキスプレスとそのグループ会社であるポケットコンシェルジュが主催するイベントで、プラチナ・カード®️会員様が参加対象です。

「料理を通じて、国内外の食を愛する多くの方に、日本にはたくさんの素敵な生産者さんがいることを知っていただきたい。そしておいしい料理と楽しい時間を共有することで、お客様ご自身も飲食に関わる人々も元気にしたい。そのきっかけになればと、このイベントを企画しました」と長谷川さんは語ります。

第7回のコラボレーターは、福岡・春吉にある居酒屋『藁焼 みかん』大将の末安拓郎さん。10組の幸運なゲストだけが見ることができる特別なサプライズが用意された空間で、元気いっぱい・幸せオーラを客席に振りまいているような末安さんを迎えて、長谷川さんはどんな特別な体験を演出したのか。笑顔・笑顔・笑顔の宴のもようをご紹介します。


『傳』 長谷川 在佑

日本料理店『傳』店主。家庭の温もりを大切にしながら、伝統的日本料理を洗練と親しみやすさを合わせ持つガストロノミーへと昇華させ、“和食”の魅力を世界に発信する。2022年版「世界のベストレストラン50」20位(アジア最高位)、2022年版「アジアのベストレストラン50」1位、接客を評価する「アート・オブ・ホスピタリティ賞」受賞。有名グルメガイド二つ星、女将・えみさんが「サービスアワード」受賞。著書に『普段着の和食がおいしい理由』(新星出版社)など。

『藁焼 みかん』末安 拓郎

九州を代表する名居酒屋『藁焼 みかん』『赤坂 こみかん』大将。福岡・久留米の米農家に生まれ、高校を卒業後、ホテル日航福岡『弁慶』にて料理人としてのキャリアをスタート。京都『京料理道楽』での6年間の修行を経て福岡でさらに研鑽を積み、2014年『藁焼 みかん』、2018年『赤坂 こみかん』を開業。Webサイト「ごはんのため」にて白米をおいしく食べるためにつくりあげた「ごはんのための明太子」を販売中。2023年1月上旬、九州産の食材とサバ料理、釜炊きごはんにフォーカスした3号店『さばたろう』を開業予定。

懐石の流れを汲む『傳』と堂々と渡り合った、日本が誇る“居酒屋”料理

初心者には敷居が高いという印象だった日本料理を、伝統を守りつつ「みんながおいしく楽しめる」料理へと革新し、若い世代や外国人へも広く門戸を開き、ユネスコ無形文化遺産に登録されるずっと前から“和食”の魅力を世界に広め続けてきたフロントランナー『傳』。「Dining Crossover produced by 傳」シリーズ初の“和食”同士のお相手に選ばれた末安さんは、今回が人生で2度目のコラボレーションとか。どれだけの時間を準備に費やされたのでしょうか。お店に入った瞬間から、いや何なら入店する前から「チーム傳とチームみかんに全身全霊で歓迎されている」とゲスト全員に感じさせるほのぼのと温かい開宴です。

また、今回は『傳』の女将・長谷川えみさん(以下、えみさん)から細やかな指導を受けている鈴木彩月(あやめ)さんが、初めてノンアルコールペアリングを担当。初々しさはうまく発揮されるとものすごいパワーに変換する。そう実感する多幸感に満たされた一夜となりました。

最中

フォアグラには甘いもの。そんなフレンチのセオリーをすんなり受け止めた末安さん。奇を衒うことなくおいしく味わう九州の秋を表現しました。西京味噌で漬けた『傳』のフォアグラにのせたのは、福岡・うきは「赤司(あかし)農園」の完熟柿でつくったジャム。さらに、甘さを引き締めるためにほんの少しだけ酸味を加えたいと、自家製のらっきょうをスライスしてテクスチャをプラス。これを脊髄反射的にできるのが料理人のセンスの見せどころで、フォアグラのうま味を主役にしつつ和の秋の味覚を楽しめる最中が完成しました。合わせたのは熊本・玉名郡「花の香酒造」の「産土 2021 山田錦」。哲学に基づき環境に配慮して酒造りに取り組む。そんな造り手の顔が見えるお酒を紹介したいという末安さんらしいセレクトです。


豆腐

肌寒くなったこの時期には、ぐつぐつと煮える小鍋料理が喜んでもらえるはず。そこで“熱々で食べてこそおいしい一品”として長谷川さんが手がけたのが白子豆腐です。タラの白子を牛乳と葛粉で練り、玉ねぎで甘みを加えた白子豆腐を揚げ、明太子を豆乳でのばした餡をかけました。「火傷に気をつけてふぅふぅしながら食べてくださいね」。熱くなった舌を冷ましてくれるのが、ひんやり感が嬉しいジューシーなみかんのカクテル。福岡・八女「喜多屋」の地酒をベースに、福岡・久留米南部で収穫された「山川みかん」の果汁をブレンドして、みかんのリキュールをエッセンスに加えました。半割にしたみかんを乗せ、桝のふちに塩をチョンと添えたプレゼンテーションもかわいいこのカクテルは『藁焼 みかん』のシグネチャードリンクです。

サラダ

「ファイヤー!」のかけ声と共に目の前で始まった藁焼きパフォーマンス。『藁焼 みかん』の名物を『傳』のシグネチャーディッシュ「畑の様子」と合体させたのがこちら。主役は脂がのって身がもちもちのヤイトガツオ(関東ではスマガツオと呼ばれます)。カツオの脂をさっぱりと食べられるように、野菜はからし菜やルッコラなど6種類の葉物をチョイス。『傳』では焙煎していない胡麻油と塩昆布のパウダーをまとわせますが、今回はカツオの存在感を引き立てるため「畑の様子」史上初!の焙煎した胡麻油を使いました。サイドには『傳』自家製の海苔佃煮「でんですよ!」(みなさまご存じのアレのオマージュ)と塩を添えて。お酒は伝統を踏まえながらモダンな味わいで日本酒好きから注目が高い福岡・糸島市「白糸酒造」の「田中六五(たなかろくじゅうご)生」。末安さんが誇る地元のお酒です。

傳タッキー

独特のタレ目が印象的な福岡・博多「にわかせんぺい本舗 東雲堂」の「二◯加煎餅(にわかせんぺい)」。たまごボーロのようにぽそっとしてほのかに甘い福岡の銘菓を『傳』のシグネチャーディッシュと合わせる大胆な発想です。甘味とバランスを取る食材として末安さんが選んだのが、昔ながらの製法でつくったしっかりと酸っぱくてしょっぱいお手製の梅干し。米と梅という日本人のDNAに組み込まれた王道の組み合わせを鳥手羽に詰め、粉末状にした「二◯加煎餅」にほんの少し塩を加えた自家製「ハッピーパウダー」をまとわせることで、定番から新しい味をつくりあげました。ペアリングは「居酒屋で揚げ物を食べるならビール」と、熊本産みかんの果汁と皮をつかったオリジナルのクラフトビール「みかんエール」。ノンアルコールは『傳』のジンジャーシロップを使ったジンジャーエールと、こちらも気取らない楽しさを演出しました。

お椀

「ジビエ」として近年認知度が高まっているイノシシ肉。食べ慣れない人も多く好みが分かれる食材ですが、害獣として被害が拡大しているため、食用としてより多く活用されることが期待されています。そんなイノシシを「誰もがおいしく食べられる居酒屋料理にすることで、食肉としての魅力を広めたい」と末安さん。みそ仕立ての鍋料理が定番ですが、よりポテンシャルを引き出したいと長谷川さんと知見を合わせ、酒かすを合わせたお椀が完成しました。酒かすは『傳』オリジナルラベルの日本酒「手取川」を手がける「吉田酒造店」の上質なもの。季節のきのことフレッシュなセリの風味も相まって、イノシシ肉の野生味を味わうというよりは、しっとりした肉質のうま味が前面に出た上品な仕上がりです。お酒は福岡・久留米「旭菊酒造」の「旭菊 大地の酒」特別純米。ほっこりした汁ものにぬる燗を合わせるという演出で、ゲストはさらに温まりふんわりとほどけていきました。

博多の料理が大好きで、実はもつ鍋をプロデュースしている長谷川さん。醤油味やみそ味が定番のもつ鍋に「タイ風」「韓国風」と海外のエッセンスを加えて新しい楽しみ方を提案しています。福岡・飯塚の和牛専門店『焼肉のMr.青木』から仕入れる新鮮で上質なもつを食べてほしいという末安さんの思いを受け止めつつ、次の「土鍋ごはん」への流れを考えた長谷川さんが考案したのが、もつにシーフードを合わせて唐辛子とライム、カフィアライム(こぶみかんの葉)でエキゾチックに仕上げたトムヤクムン風もつ鍋。伊勢エビ、ヤリイカ、ハマグリと豪華な海鮮を盛り合わせた鍋は、ビジュアル的にもインパクト抜群で非日常感と祝祭感があり、締めのごはんに向かって盛り上がりは最高潮に。スープの刺激的な辛味とさわやかな酸味に合わせたのは「熊本ワインファーム」の「マスカットベーリーA 樽熟成2018」。

てんこ盛りの伊勢エビが鍋から溢れた、ビジュアル的にもインパクト抜群のもつ鍋。絶好のシャッターチャンス、とスマホを構えるゲスト全員がちゃんと撮影できるよう、ふたりだけでなくチーム全体で一人ひとりとしっかり向き合う姿が印象的でした。

土鍋ごはん

1本2kg近くもある『焼肉のMr.青木』の大きな黒タン(黒毛和牛のタン)。これを末安さんの自宅の裏庭にある樫からつくった薪で、開宴前から4時間以上かけてゆっくりスモークした「燻製タン」を食べ応えのある厚さに切り、炊きたての土鍋ごはんにオン。末安さんが母親と共に育てた米は「お米自体の甘さと香りをそのまま味わってほしい」(長谷川さん)と白米で。つくね芋のとろろをかけ、大根菜の漬けものをのせました。みそ汁は有明海のツガニ(モズクガニ)を贅沢にもたっぷりと出汁に使った山椒の香るカニ汁。小さなものまで手をかけるのが末安さんの料理の特徴で、自家製のぬか漬けも抜群の存在感を発揮しています。ペアリングは鹿児島・霧島「佐藤酒造」の定番「本格焼酎 佐藤 麦」のソーダ割に大分の柚子の皮をおろしかけた『藁焼 みかん』の人気メニュー「ふり柚子チャチャチャ」。

甘味

会席料理と一品料理の構成の違いや、福岡と東京の味覚の差など、長谷川さんとの共演でさまざまな気づきを得たという末安さんに一任された甘味。食べ疲れすることなくさらっとお腹に収まりつつ、特別な一夜を締めくくるのにふさわしい華があり、『藁焼 みかん』らしいもの。そう考えた末安さんがつくったのが、みかんジュースに豆乳を加えてさっぱりと軽やかに仕上げた自家製のアイスクリーム。南米ペルーのアマゾンカカオの魅力を日本に広めた料理人・太田哲雄さんのカカオをパリパリに仕上げたドライみかんにまとわせてアイスクリームにのせ、黒糖の百合根餅を添えました。締めくくりは福岡・八女のほうじ茶を凝縮して抽出した「八女ほうじ茶のエスプレッソ」。最後まで九州の魅力が伝わる、末安さんらしい甘味でした。

奮闘する末安さんをサポートしようと、デザイナーの友人が手がけた愛とユーモア溢れるメニュー。使われる食材がイラストで表現されていて、眺めるだけでも心が和むし、隣り合った同士の会話を弾ませるカンバセーションピースとしてもひと役買っていました。

イベントを終えて

『傳』を愛する世界中の人たちが、長谷川さんをこう評します。「彼は見ているだけで人を幸せにする人だ」。同じ言葉を末安さんにも贈りたい。末安さんは人に幸せを届ける人だ、と。そんなふたりが本気で仕掛ける“お祭り騒ぎ”が、楽しくないはずがありません。

にぎやかな接客に気を取られがちですが、末安さんの料理はしっかりとした技術が支える、味の輪郭がはっきりと際立ったメリハリの効いた本格的な和食。その場で食材を捌き調理することからもむしろ割烹では。そう問うと末安さんは言いました。「いや、うちは居酒屋料理です」。自称“居酒屋のオヤジ”として板場に立ち、誰もがおいしく味わえる料理と楽しい時間をすべてのお客様に提供する。それが末安さんの誇りなのです。

「自分が世界に出始めたばかりで、まだ経験が浅かったころ、僕の思いを最初に受け止めてくれたのがアレックス・アタラさん(世界的に影響力を持つブラジルのトップシェフ)でした。今度は僕が、拓ちゃん(末安さん)を受け止めてサポートしたい。彼の料理の腕は信頼できるから、拓ちゃんのつくりたい料理に僕らしさを加えるかたちでメニューを構成しようと考えました」と長谷川さん

季節はちょうど一年でもっとも食べものがおいしくなる秋真っ盛り。せっかくいらしてくださるお客様に、九州の“うまいもの”をあれもこれも召し上がっていただきたいと、最初に考えたお品書きはまるで満漢全席のようだったとか。「拓ちゃん、こんなに食べさせたらお客様が死んじゃうよ(笑)」と削りに削り、最後まで残った精鋭たちがメニューに並びました。ちなみにアルコールのペアリングも末安さんが担当。ドリンクにも九州らしさが表現され、「楽しく飲んでほしい」という末安さんの温かい思いが伝わる、ここでしか味わえないラインナップです。

米農家の実家を手伝いに行ったついでに持ち帰った稲わらでわら焼きのパフォーマンスをしたり、ゲストの目の前で熱々の鍋を仕上げたり、重たい土鍋をものともせず明るい笑顔で全テーブルを回ったり、リズムを口ずさみながら柚子の皮をすりおろして振りかけたり。こんなお店に日々行ける福岡の人たちがほんとうにうらやましい。ライブ感とコミュニケーションを何よりも大切にするという『傳』『藁焼 みかん』両店に共通する姿勢が、チーム傳とチームみかんで共鳴し合い、さざなみのように店内に広がって満ちていく時間は、とても温かく幸福なものでした。

残すところあと2回となった「Dining Crossover produced by 傳」。「Dining Crossover produced by 傳では、その時だけしか味わえない特別なメニューと空間を創造しています。ゲストシェフは、僕自身がこの人となら新しい世界をつくれると確信している料理人仲間です。国内外で得た経験を生かして、これまでにない刺激的なコラボレーションを開催しますので、次回も注目してください」(長谷川さん)。

第8回はシリーズ初の“ホスピタリティの共演”がテーマ。有名グルメガイド二つ星に輝く東京・浅草のフレンチ『Hommage(オマージュ)』が『傳』にやって来ます。マダム・麻友香さんは有名グルメガイド「サービスアワード」の2022年度受賞者、女将・えみさんは同アワードの2023年度受賞者。ふたり揃って着物をまといお客様をお迎えします。日本の食文化史に残るであろう前代未聞のガストロノミーエクスペリエンス「Dining Crossover produced by 傳」。次回もどうぞご期待ください。

【撮影・文】江藤詩文​

アメリカン・エキスプレスでは、本イベントを含め、あらゆるダイニング特典をご紹介しています

参加レストランのご紹介

外苑前駅から徒歩7分ほど、外苑西通り沿いのビル1階に店を構える日本料理店『傳』。料理と接客を通して“人を楽しませること”を追求し、家庭料理の温もりが伝わるような、新しいスタイルの日本料理店を築き上げる。木の温もりを感じさせるウッディーな店内は、14名が座れるロングテーブル、2~4名掛けのテーブル席、個室があり、記念日やデートなど、特別な日のご利用に最適。ぜひ一度、“長谷川流”の料理とおもてなしをご堪能いただきたい。

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藁焼 みかん(わらやき みかん)

国内外から人が集まる福岡きっての名居酒屋。一品料理が中心で取り分けも自由だが、初来店や一人客など少量多品を試したい場合は、手間を厭わず名物を見繕っておまかせコースも仕立ててくれる。どの料理も見た目は気取りがないが、その味わいは驚くほど完成度が高い。板場をぐるりと囲むカウンター席のほか小上がりもあり、ひとりでもグループでも、食事中心でもお酒メインでも二次会利用でも歓迎してくれる度量の深い温かい居酒屋だ。

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