Pocket Concierge

【特別レポート】
Dining Crossover produced by 傳
第1回 「傳 × La Cime」

アジア圏すべてのレストランを調査対象とするランキング「アジアのベストレストラン50」でNo.1に輝いた日本料理店『傳』店主・長谷川在佑さん。先ごろ、長谷川さんがホストとなり、彼自身が尊敬してやまない世界のトップ料理人を迎えて共にガストロノミーを創造する企画の第1弾として「Dining Crossover produced by 傳」が開催されました。アメリカン・エキスプレスとそのグループ会社であるポケットコンシェルジュが主催するイベントで、プラチナ・カード®以上のカード会員様が参加対象となります。

「料理でみんなを笑顔にして幸せをつなぐ」。この想いが長谷川さんのすべての行動の指針となっています。「2年半もの長い間、僕たち飲食店も辛かったですが、いつも僕たちを支えてくれている生産者のみなさんもほんとうに大変な時期が続きました。おいしい料理を通じて、日本にはたくさんの素敵な生産者さんがいることを知っていただきたい。そしておいしい料理をお客様に食べていただくことで、飲食に関わるみんなを元気にしたい。そのきっかけになれればと、このイベントを企画しました」(長谷川さん)。

第1回のコラボレーターは、大阪・本町のフランス料理店『La Cime(ラ・シーム)』オーナーシェフの高田裕介さん。フラワーデザイナーが手掛けた、この日に合わせて満開に咲かせた2種類の桜の下、“味覚の天才”と称される高田さんを迎えて、長谷川さんはどんなクリエイションに挑んだのか。1日限りの優美な宴のもようをご紹介します。

※アメリカン・エキスプレスは、ニューノーマルのなかで前進しつづけるレストランや生産者を応援しています。


『傳』 長谷川 在佑

日本料理店『傳』店主。家庭の温もりを大切にしながら、伝統的日本料理を洗練と親しみやすさを合わせ持つガストロノミーへと昇華させ、“和食”の魅力を世界に発信する第一人者。2021年版「世界のベストレストラン50」11位、2022年版「アジアのベストレストラン50」1位、接客を評価する「アート・オブ・ホスピタリティ賞」を受賞。有名グルメガイド二つ星。最新刊「普段着の和食がおいしい理由」(新星出版社)。

『La Cime(ラ・シーム)』 高田 裕介

フランス料理店『La Cime(ラ・シーム)』オーナーシェフ。渡仏して『タイユヴァン』『ル・ムーリス』等で研鑽を積み帰国。2022年版「アジアのベストレストラン50」6位、アジアのトップシェフが尊敬する料理人を選ぶ「シェフズ・チョイス賞」を受賞。有名グルメガイド二つ星。天才的といわれる味覚の絶対値と技術力は特にプロからの注目が高い。出身地・奄美大島の食材の価値を高めるための活動も展開中。

『傳』のシグネチャーディッシュに『La Cime』が添えたフレンチの洗練

作法が難しくて敷居が高い。そんな印象が定着しつつあった日本料理を、伝統を守りながら「おいしくて楽しい」料理へと変え、若い世代や外国人へも広く扉を開き、和食の魅力を世界に広めた日本料理店『傳』。フォアグラを詰めた「傳最中」やファストフード店を思わせる揚げ物「傳タッキー」、愛らしい顔をした人参がトレードマークの「畑の様子」など、『傳』には長谷川さんが発案した世界的に有名な数多くのシグネチャーディッシュがあります。『傳』を初めて体験するゲストのために、長谷川さんの持つ世界観を主軸にしたメニューに、革新的フレンチの雄・高田さんがどう融合するのか。世界が注目した今回限りのメニューが誕生しました。

ブーダンドッグ

『La Cime』開店時からの高田さんのシグネチャーディッシュ。フランスから材料を取り寄せるのではなく、日本の食材でフランス料理をつくる意味を自問していた時期に考案しました。パン、肉、魚、チーズなど専門店が分業してガストロノミーを支えるフランス文化に倣い、ブーダンノワール(豚の内臓や血を使った伝統的なソーセージ)は、『La CIme』と同じく関西から世界を見ている日本トップクラスのシャルキュトリ(肉加工品専門店)「メツゲライクスダ」(兵庫・芦屋)に製造を委託。天ぷらをヒントに、衣をつけふんわりサクサクに揚げています。

フォアグラ最中

西京みそ漬けのフォアグラを最中の皮に挟んだ『傳』のシグネチャーのひとつ。フランスで高田さんが師事した世界的に名高いシェフ、ヤニック・アレノさんが考案した、フォアグラを海苔で巻いてから砂糖で包んで焼く調理法にひらめきを得て、レモンとたんかん(みかんに似た柑橘)にすじ青のりのうま味を合わせたコンフィチュールをのせ、砂糖ではなく水飴を使い上品な甘さに仕上げた大根で食感を、わずかなサワークリームで柑橘とリンクする酸味を加えました。フォアグラには甘いものを合わせるというフランス料理の定石を踏まえつつ、フォアグラの脂の甘みとコンフィチュールの甘酸っぱさを重ねた、洗練されたタッチの一品です。

ボタンエビ / ホワイトアスパラガス

醤油、酒、みりんをベースに沖縄産島唐辛子を効かせた『傳』特製のピリ辛の漬けダレに軽く漬けた、ねっとりととろみのあるフレッシュなボタン海老が主役。高田さんが担当した北海道のホワイトアスパラガスは、穂先の部分は、塩水に漬けて発酵させたマリネをひらひらとリボン状の薄切りに。軸の部分は、シャキシャキと心地いい歯触りを感じるダイス状にカットしたものを、エシャロットと合わせたタルタルに。日本料理の薬味に見立てています。一枚だけ忍ばせたエストラゴンの葉が北欧の香りをプラス。

ペアリング

中国料理の酔っ払いエビ(紹興酒に漬けたエビ)にも似た風味のあるボタンエビと、甘さのなかに春野菜ならでは苦味とわずかなえぐみを潜ませたホワイトアスパラガスの風味に合わせたのはフランス・アルザスのナチュールワイン。かすかな微発泡感が爽やかで、甘さと酸味のバランスが料理を引き立てます。

傳タッキー

『傳』の代名詞にもなっている「傳タッキー」は、日本料理の「おしのぎ」のポジションにあたる料理で、鳥手羽にもち米を詰めてからりと揚げたもの。これまでも米にさまざまな具材を炊き込んだり、ころもにフレーバーを加えたりしてきましたが、フレンチの要素を取り入れてソースを添え、ディップしながら食べるのはこれが初の試みです。米に混ぜたのは干し貝柱、ふきのとう、ヘーゼルナッツ、シナモン。ソースははっさく、レモン、柚子といった柑橘をベースにきびなごの魚醤やバイマックルー(コブミカンの葉)をプラス。もち米のシナモンと重なって香港や東南アジアの街角の香りを彷彿とさせます。

サワラ / 豆鯵 / ウルイ / ポロネギ

春の白身魚は脂が少なく、あっさりと淡白な味わいが特徴。調理次第では身のパサつきが気になりますが、裏を返すと高い技術力さえあれば、さまざまな要素を重ねて複雑な味を構築できるポテンシャルの高い食材です。サワラは低温の出汁の中でゆっくりと加熱してふっくらジューシーな仕上がりに。合わせるソースは、熱したオリーブオイルの中で豆鯵を骨まで丸ごと食べられるまで加熱し、ウルイとポロネギ、南米の独特な香りを放つハーブを加えたオリジナルアヒージョ。テーブルにどんっと置かれたぐつぐつと煮えたぎるアヒージョを、たっぷりと好きなだけ“追いソース”して熱々のうちに頬張るライブ感がエキサイティング。

傳サラダ

「畑の様子」の愛称で親しまれている傳のシグネチャー。蒸したり焼いたり揚げたり生のままだったりと、ひとつひとつの材料の状態を見極め、それぞれをベストな方法で調理したうえでひとつの味わいにまとめあげる、サラダと呼ぶにはもったいないほど手のかかったひと皿です。今回は春の若い豆やこごみなどの山菜、ビーツやフルーツかぶなど根菜、ルッコラやわさび菜など複数の葉もの野菜と、15種類以上の野菜が使われました。味つけのベースは傳と同じくパウダー状に手切りした塩昆布とごま油ですが、食べ進むと葉野菜の下にはセミドライトマトのソースが。高田さんの遊び心で味の変化を楽しめました。

ペアリング

ペアリングはアルコールまたはノンアルコールのどちらかを選択。ですが「傳サラダ」にはリフレッシュの意味も込めて玉露が出されました。30℃という低温でゆっくり抽出した京都・宇治産の玉露は、出汁のようなうま味が綺麗に引き出されて、塩昆布のうま味と調和します。

猪 / 土鍋ご飯 / 川せり

今では多くの和食店で楽しめるようになった、土鍋の炊き込みご飯の蓋をゲストの目の前で開け、香りや湯気まで分かち合うひと時。これを取り入れた先駆けが『傳』です。高田さんの料理人仲間である、新潟のイノベーティブフレンチ『Restaurant UOZEN(ウオゼン)』から分けてもらった上質な猪肉をローストして、沖縄の島こしょうが香るペッパーソースを合わせました。これだけで食べるとフレンチ、塩漬けのバラ肉とせりを炊き込んだ土鍋ご飯とみそ汁、香の物と合わせると和定食風と、さまざまに表情を変えるのが楽しい。猪肉の脂とみそ汁のハーモニーも絶妙です。

ペアリング

「猪 / 土鍋ご飯 / 川せり」のペアリングは、猪肉のローストにフォーカス。アルコールは、フランス・ブルゴーニュのモレサンドニの作り手ポンソ。スパイシーな香りが島こしょうのソースとリンクします。ノンアルコールは猪肉の赤身に合わせて、イチゴの香りと色素を抽出したドリンクにカカオで香りを足し、ナスタチウムの花を浮かべました。

桜 / イチゴ /カカオ

空間いっぱいに大きく枝を広げた桜の枝を摘み取ったような、桜の木と花がモチーフの美しいデザート。ごく少量の砂糖とレモン汁だけを加えたシンプルなイチゴのピュレを、塩漬けにした桜の葉と花で香りをつけたこし餡のやわらかなムースで包み込み、ビターなチョコレートでコーティング。桜の花びらが舞う瞬間を切り取ったかのように、ゲストの目の前で凍らせて花びら状にカットしたイチゴを振りかけます。リアルに見える木の表皮は、カカオの薄皮とピスタチオで表現しました。

小菓子

どちらもユーモアたっぷりに“大阪らしさ”を表現した『La Cime』のシグネチャー。大阪名物ミックスジュースを入れたホワイトチョコレートのボンボンは、極薄いチョコレートを口の中で割ると、フルーツフレーバーのミックスジュースが口いっぱいにほとばしります。幸運の神様といわれるビリケンさんをかたどったグミは、ベルガモットとたんかんをブレンドした柑橘らしいさわやかな食後感。奄美大島のばんしろう茶(グァバ茶)で締めくくります。

イベントを終えて

日本料理とフランス料理。家庭料理のように親しみやすく、日本料理の難解な要素をなるべく取り除き、誰もが好きにならずにいられないまん丸の味をつくる名手の長谷川さんと、絶対音感ならぬ絶対味覚を持ち、ひらめきから想定外の食材を組み合わせ、時代の最先端の一瞬を切り取ったようなキレキレの味をつくる高田さん。料理としてのアウトプットは一見正反対に見えるふたりのコラボレーションは、感性豊かでエキサイティングなものでした。

コラボレーションでよく行われるのは、お互いが代表的なメニューを持ち寄り、交互に出していくというスタイル。けれども今回は、すべての皿にお互いの個性を融合させて盛り込みました。「長谷川さんとは気心が知れていて、料理で何を表現したいかを理解し合っていますし、何よりお互いの料理が好き。それだけに両者が意見を交換することで料理を高め合い、コース全体を通じてひとつのストーリーを描く完成度の高いメニューをご提供できました」(高田さん)。ほんとうにこれだけ磨き上げたメニューが、一度きりとはなんだか切ない。けれども長谷川さんはこう言います。「Dining Crossover produced by 傳では、今回に限らず、毎回このためだけのメニューと空間を創造します。ゲストシェフは、僕自身がリスペクトしていて、その料理哲学に共感している人だけにお願いします。どこにもない刺激的なコラボレーションを開催しますので、次回も注目してください」。

第2回のゲストは「西中洲の太陽」の愛称で親しまれ、九州やアジア各国で絶大な人気を誇る『La Maison de la Nature Goh(ラ メゾン ドゥ ラ ナチュール ゴウ)』の福山剛さん。日本国内のみならずアジア各国からも注目される一回限りの晩餐をどうぞお見逃しなく。

【撮影・文】江藤詩文​

アメリカン・エキスプレスでは、本イベントを含め、あらゆるダイニング特典をご紹介しています

参加レストランのご紹介

外苑前駅から徒歩7分ほど、外苑西通り沿いのビル1階に店を構える日本料理店『傳』。料理と接客を通して“人を楽しませること”を追求し、家庭料理の温もりが伝わるような、新しいスタイルの日本料理店を築き上げる。木の温もりを感じさせるウッディーな店内は、14名が座れるロングテーブル、2~4名掛けのテーブル席、個室があり、記念日やデートなど、特別な日のご利用に最適。ぜひ一度、“長谷川流”の料理とおもてなしをご堪能いただきたい。

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La Cime(ラ・シーム)

大阪のオフィス街として知らる本町(ほんまち)に店を構え、洗練されたフランス料理を楽しむことができる『Restaurant La Cime(ラ・シーム)』。コースは、ランチ、ディナー共にペアリングも行ない、ワインだけでなく、日本酒、さらにはフルーツや野菜にスパイスやハーブの香りをつけたカクテルなども用意することで、料理の美味しさをさらに引き立てている。店内は円卓のテーブル席と6名まで利用可能な完全個室もあり、接待だけでなく記念日やデートなど、大切な人と過ごす時間に最適だ。

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ポケットコンシェルジュとは

レストラン検索からご予約、会計までワンストップでご提供する「ポケットコンシェルジュ」。食に精通したスタッフが自信を持ってお届けできるお店だけを厳選し、ご紹介。名店ならではの質の高い料理、そして充実のサービスでお連れ様にも満足いただけます。
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