東京・中目黒駅を出て目黒銀座商店街を徒歩3分。中目黒駅前郵便局を過ぎた先の細い路地を入ると、トタンで囲まれた築100年の趣のある長屋が見えてくる。その入口の先にあるのが、2018年5月にオープンした『天婦羅みやしろ』である。店主の宮代 直亮(みやしろ なおあき)氏は、「横浜ロイヤルパークホテル」や「ヒルトン東京 お台場」の日本料理店で料理長を務めた実力派。
「豊かな四季が育んだ食材、それを提供してくださる生産者、そして食べに来てくださるゲストに感謝」という宮代氏の言葉通り、素材や調理に対する姿勢は真摯そのもの。宮代氏が長い年月をかけて培ってきた技術で、素材の良さが最も引き出される絶妙のタイミングで天婦羅を揚げる。ほどよい衣に包まれた天婦羅は、見た目の美しさもさることながら、口に入れたときの温度、閉じ込められたうま味、食感のバランスも絶妙。凝縮された季節の風味が広がる瞬間、誰もが天婦羅の奥深さを体感するはず。
コースの中で、天婦羅の合間に出される季節のお椀やお造りも見逃せない。特にカツオだしにこだわったお椀は必食の一品。だしに使うカツオ節は鹿児島・枕崎の一番削りの中でも厳選された芯の部分のみ。そこに、その日の具材に使う魚の骨から丁寧に取ったスープを合わせることにより、他では味わえないだしと具材との調和が楽しめる。料理に添える日本酒やワインは、毎月のコースに合わせて宮代氏自らが揃える。
味のあるレトロな外観とは対照的に、店内は柔らかな木のニュアンスが広がる良質な木材と和紙を使った、落ち着いた装飾が特徴的な純和風の洗練された空間。カウンター8席のみで宮代氏との距離が近いため、天婦羅を揚げる軽妙な音だけでなく、料理と向き合う宮代氏の緊張感も伝わってくることだろう。純粋に料理を楽しむのはもちろん、店との関係もじっくり築いていけるような、そんな人情味ある店。友人同士や会食、デートなどで、ゲストにサプライズを与えるきっかけとしてもまた有効である。
※世界的グルメガイド東京2023年度版にて一つ星を獲得
■アクセス
東京メトロ日比谷線 中目黒 徒歩5分